浅黒い肌に、全身を彩る鮮やかな刺青。
あれはシャザだ。
全身の刺青はほとんどの魔法を遮断するフィールドを作り出している。
手ごわい相手だった。
だが、全身の刺青は万能ではない。
その効力を発揮するにシャザの体力をし、打ち消す魔法の強さに応じただけの体力を失うのだ。
剣の腕ではほぼ互角か、むしろシャザの方が優っていたかもしれない。
しかし、彼女が戦ったときのシャザはキリエと戦った際の消耗から十分に回復していなかった。
「きさま、なぜ・・・」
それがシャザの最期の言葉だった。
知らない仲ではなかった。
時には共闘したことすらある。
性格も好みも違ったが、女戦士同士として親近感・・・いや、友情さえあったといってもいい。
彼女が別の人狩りと共に襲いかかってきたのを、シャザはむしろ愉しんでさえいた。
本気だとは思っていなかったのだ。
それはすぐに驚愕と怒りにかわるのだが・・・。
「ごめんなさいね。私の予想よりも早かったけれど、いつかはこうなる運命だったのよ」
彼女は血と汗をふき取ると手鏡を取りだし、シャザの刺青を真似た化粧をはじめた。
すでに全身にシャザの刺青を真似た化粧が施されている。
服を脱ぐと、シャザから奪った衣服とアクセサリーを身にまとう。
顔をも彩る刺青と化粧の印象が強すぎて、シャザの顔かたちそのものを記憶している人物は少ない。
マントを身に着けてしまえば、近づかなければ見分けがつかなかった。
はっ・・・はっ・・・。
荒い息づかいが意識を呼び戻した。
拡散していた意識が急速に収束し、カラダからの刺激が意識にとどけられる。
荒い息遣いは自分のものだ。
獣じみたニオイが鼻についた。
あの人狩りの体臭だ。
ヒュームは無意識のうちにカラダをよじり逃げ出そうとしたが、人狩りの強大な腕力がそれを許さなかった。
「気がついたか？」
「・・・う・・・」
後ろ手縛りのまま人狩りの膝の上に載せられているのだ。
「くっくっく。シャザほどじゃないが、おめえのモノもなかなかのモンだな。いい持ち物だ」
人狩りの下品な笑いが気にさわったが、足の動きすらも制限されていた。
足首に巻かれているロープが後ろ手縛りのロープに繋げられている。
これでは膝立ちでしか動けない。
自力で人狩りの男根から抜け出ることすらできないのだ。
「縛らねば何もできないか？・・・下衆が」
「下衆ねえ。その俺からも逃げられない立場で言うセリフじゃねえな。それに、縛りが必要なのは今だけさ。人間ってのは、心をしばっちまえば、縄はいらねえ。おめえなら百も承知かもしれねえがな」
「・・・」
人狩りはヒュームの体内に埋め込んだ逸物を巧みにあやつり、彼女の粘膜をえぐる。
人並み以上に長大なモノが、そり、うねり、突き上げる。
片手一本でヒュームの体を支えながらもその口ともう片方の手で彼女の体を舐めるように犯す。
「う・・・ふっ・・・」
「気丈だなあ、そういうの、好きだぜ。ええ？そのうぶ毛一本に触れただけでカラダが震えるってのによ」
乳輪を爪でこすると女の体がびくりと震える。
そのまま肌自体にはふれずに、微妙な距離をとって肌を撫でてやる。
「はあっ・・・あ、ああ」
「こらえてもムダだぜ？お前の体には普通の３倍もの快楽の針が打たれているんだからな」
加えるに、やはり２倍以上の媚薬。
人狩りは内心驚嘆しながらも女をいたぶる。
魔術師にしろ剣士にしろ、ある程度修練を積んだ人物は快楽への耐性をも備えることがある。
しかし、この女の強靭さは彼の常識を超えていた。
体はもう快楽にとろけているというのに、その精神はなおも抵抗を続けるのだ。
魔術師は肉体と精神の分離の訓練をするが、しょせん精神を支えるのは肉体だ。
精神は肉体と無関係ではいられない。
肉体が精神を、精神が肉体を支配するのは、彼らにとって変らない真理だった。
そう、心を縛る一番簡単な方法は、肉体を縛ることなのだから・・・。
最も憎むべき敵である奴隷商人に犯されているという屈辱は、その抗いがたい快楽とともにヒュームの体と心に染み込んでいく。
じわじわと、精神をよろうバリアにあいた小さな穴から。
この穴は、肉体と精神とをつなぐ感覚のつながりだ。
ヒュームは神経からの情報を遮断するすべを心得ていたが、完全な遮断は死か、発狂か、あるいは魔術師への従属へとつながる。
肉体の支配権は、保ったままで快楽だけを遮断することはできないのだった・・・。
肉体の支配権を保ちながら、押し寄せてくる快楽を押しとどめるのは押し寄せる波に立ち向かうのに似ていた。
残り少ない魔力をいかに有効に使って精神を保っていくか。
押し寄せる快楽の中でバランスを取ろうとする異常なスリルが、女の心を焼く。
「あ、う・・・ああっ！」
「ようやく口が開いてきたか？時間はたっぷりあるぜ。そら」
人狩りは女の反応に機をよくしたのか、アクロバティックな体位で女を責める。
常人ならば扱いかねる、縛られた女の体を軽がると扱い、女の肉をおさえつけ、こね、にじる。
開き、もぐり、締め付ける。
並みの女だったら、恐怖と苦痛に泣きわめいたかもしれない。
だが、この女はなおも泣きも、懇願もしない。
ただうめき、あえぎ、体をふるわせるのみだ。
「おめえはシャザの仇だ。傷こそつけねえが、キツイお仕置きをしてやるぜ」
人狩りはヒュームの乳首を指で弾いた。
「！」
声なきうめきとともに女肉の締め付けが強くなり、人狩りは頬をゆがめた。
さあ、どうしてくれようか。
この丸い尻を叩きのめしてやろうか、それともさらに屈辱的な姿勢をとらせてやろうか。
いや、このキャラバンで飼っている動物たちを使うのはどうだろう？
人狩りは唇をなめまわした。
「愉しませてくれよ。あっさりおねんねするんじゃないぜ」
人狩りは辛抱強く女の体から快楽とあえぎ、悲鳴にうめき、そして蜜液を絞り続けた。
「食事だ」
後ろ手につながれた女の前に、皿に盛られた食事がおかれた。
女は無言で近より、ひざまづいて食べ始めた。
巧みに後ろ手につながれたロープの張力を利用し、皿に口をつける。
尻を高くかがげた、ぶざまな、しかし淫靡な光景だ。
その太ももは乾くことのない自らの体液で濡れていた。
乳首も勃起したまま戻ることはない。
うっすらと上気し、汗のぬめ光る体は男の情欲を誘ってやまない。
「ん、ふ・・・水はないの？」
「あとでやる」
「味気ないのねえ」
女はこともなげに言うと、無言で食べ続ける。
魔術師は嬉しそうに笑う。
「くっくっく。ためらわずに食べるか？ムダな抵抗はしないが、屈服もしない。ひたすらチャンスを狙う・・・か」
「あなた・・・ん・・・相手に服従するフリなんてしたら、本当にココロの奥まで支配されてしまうもの・・・っ」
魔術師が左手の指を動かすたびに女がうめき、あえぎ、悶える。
女の股間には水牛の角で作ったらしい張り型が打ちこまれている。
これは魔術士から送られる信号でさまざまな動きをするように作られていた。
「自分が苦しむだけだと思うが？」
「そうでも、な・・・い。あ、あなたの目的は私の洗脳だと思うから」
「まあ、その通りだが・・・。肉体と精神は相関している。おまえは私のものになる」
「問題はそれがいつか、ということね」
「くくっ・・・。亜人や人狩りににお前を与えたのは私の趣味ではない。私ならもっと効果的にやるのだが」
「ありがと」
どのみち、この女にチャンスはない。
食事にも薬が混ぜられているし、このキャラバンには、責めの専門家も多い。
じきに限界が来るのだ。
少なくともそれまでは、その過程を楽しめる。
それからあとにはまた別の愉しみがあるのだが。
魔術師は肩をすくめ、女のそばを離れた。
力を奪われ、快楽に汁を垂れ流しながらも屈服しない女と、それすらも楽しむ。
この奇妙な関係はしばらく続く。
さすがに徹底しているわねえ。
檻の中につながれたまま、女は思考する。
全身の「力萎えの針」も実によく計算された場所に打ってあり、一ヶ所や２ヶ所を抜いたところで全体では効果が変らないように配置されている。
「快楽の針」にいたっては九ヶ所に打たれている。
意識を肉体を切り離す魔術師の修練を積んでいなければ、あっさりと陥落しているだろう。
よくよく評価してくれているってコトね。
でも、ちょっと厄介ね。
このまま長引いたら、カラダのほうが負けちゃうわね。
今だって、カラダが興奮し続けるのも、オツユを垂れ流すのも体力の消耗につながるんだし・・・。
でも、全体としてはうまくいったわね。
貴重な戦力も回収できたし、このキャラバンも速度を大幅に落とさざるを得なくなったし、ここから脱出できれば、さらに多くの娘達を助けられるかもしれない。
このキャラバンで今動ける傭兵の数は・・・？
・・・。
あ、食事の中のクスリか。
念が入っているわね。
眠るのは、危険。
快楽の・中で・・目覚めるのは・・・。
そうか・何日・も十分な睡眠・を・と・・・ってな、い・・・。
「それは一体どういうことなの！？」
「ですから、あの者はキリエ様やライラ様の救出の任務を果たしたのです。キリエ様やライラ様があのものを助けるべく危険を犯すことはありません」
「見殺しにしろというの？」
「それはあの者の運というものです。第一、あの者は光の軍団の一員ですらないのですよ。金で雇われた傭兵にすぎないのです」
「そんな・・・！」
キリエは絶句した。
ヒュームに告げられた位置には馬車と食料、武器がすでに用意され、連絡員が待機していた。
ヒュームの救出を主張するキリエ達と、それを制止しようとする連絡員の会話は平行線をたどっていた。
「・・・ヒュームは光の魔法を使っていたし、剣でもかなりのものだった。あれほどの使い手が光の軍団に属していないとは、正直信じられないわ」
「そのような問題ではないのです。あのものには光の軍団に属する資格がないのですよ」
これまでだまっていたライラが口を開いた。
「我々守備隊幹部と同等以上の力を持つ人物がか？」
「人物・・・ではありませんな。あの者は人間ですらないのですから」
「！？」
苦々しげな連絡員の口調が冷たく響いた。
かすかな痛みで目が覚めた。知らず知らずのうちに声がもれる。
「・・・目が覚めたか」
「死体愛好の趣味もあるとは思わなかったわ」
「意識のないうちの方が効果が上がるかと思ったのだがな」
魔術師の手によって、首筋や胸、腰などに数ヶ所新たな針が打たれていた。
この位置は・・・。
「この上まだ針を打とうというの？」
「くっくっく・・・。針にはいろいろな楽しみがある」
魔術師は楽しそうに説明を始めた。
一時的に身体機能を高める方法、肉体を麻痺させる方法、そして、感覚を鋭敏にさせたり魔法力を高めたりする方法。
「お前には、少し変った方法を試してみようかと思う。クスリを針とで全身の快感を高められ、自由を奪われたばかりか筋力までも失っているにもかかわらず、お前は精神の平衡を失っていない。亜人達に犯される屈辱も、人狩りに与えられる強制的な快楽も、お前に対して決定打にはならない」
ヒュームの表情にかすかなおびえが走ったのを、魔術師は見逃さない。
満足気な笑みを浮かべる。
「わかっているようだな。この針はお前の気脈に打たれている。お前の体から光のエネルギーを吸い出すのさ。そう、お前は魔法で自らを保つことができなくなる。魔力そのものがなくなっていくのだからな。」
要するにキリエに仕掛けられたものと同じだが、キリエと違い純粋な魔術士ではないヒュームにとってはより大きな脅威だった。
仕掛けられた術は同じでも、キリエとヒュームとでは魔力の大きさが違うのだ。
初めて怯えをみせたヒュームに、魔術師がゆっくりと近付く。
「さあ、今回は私自らかわいがってやろう」
「くっ・・・」
ヒュームは流れ出していく魔力に脱力感を覚えながら、意識を集中させた。
魔力の流れをコントロールするのだ。
より内側に。
針からの流出を少しでも抑えるために・・・。
気付かれてはならない。
ぎりぎりまで隠しとおすのだ。
魔術師は思うがままにヒュームの体から快楽を引き出していった。
「あああっ！ひっ・・・ひあっ」
「ふむ。効果的だったようだな」
魔術師は満足そうにヒュームの乳首を指ではさんだ。
女の体に震えが走る。
「うっ・・・」
乳房を撫でれば全身が震え、女壷のふちに触れれば唇を噛んで顔をうちふる。
背中をなであげればぶるぶると全身をふるわせ、姿勢を保っていられないほどだ。
「魔法で心をよろって拷問に耐えるのは簡単だが、じきに限界が来る。お前は本当に大した技術の持ち主だ。この回復の見込めない状況で、最小限の魔力でこれだけの時間を耐え続けたのだからな。だが・・・」
「うあっ・・・あっ」
男の指が、女壷の中にさしいれられたのだ。
女の中で、指からわずかな魔力が放射される。
闇の魔力だ。
強力な刺激に、これ以上ないほどに敏感になった粘膜が反応する。
激しいくいしめと驚くべき量の花蜜が男の手を愉しませる。
「ひいいいー！！や、やめ・・・」
女は必死にこらえるが、おさえきれない。辛うじて懇願の叫びを押し殺す。
「もう、これまでだ。お前の肉体は快楽を欲している。クスリも針も十分に効果を発揮しているからな。腕力も封じられ、魔力を失った今、お前はこの快楽からその精神を守ることもできない。」
「ま、まだよ・・・」
「もう、楽になってもいいんじゃあないか？」
「くう・・・ふっ・・あああ！」
魔術師の指が女壷のふちを這いまわるだけで、女は軽く達する。
魔術師はほくそ笑みながら、女の快楽レベルを押し上げていく。
やがて、魔術師の指が隠された雌芯に近付く。
女はかすかに腰をよじらせたが、手から逃げることなどできはしない。
「はあっはあっはあっ・・・！」
「私を受け入れれば、楽になれる」
女は潤んだ目で魔術師を見つめた。
かろうじて、にらんでいると表現できる視線だった。
「そうか、まだか」
魔術士はあっさりとそう言うと雌芯をすりあげた。
瞬間的に女の快楽が極大に達する。
「あああああああ！」
女の高い、淫靡な響きを持つ悲鳴は、長かった。
わずかな時間に、女はひどく消耗したようだった。
横たえられた体からは力が感じられず、乳房は粗い呼吸に激しく上下している。
つながれて以来初めて後ろ手の拘束が解かれ、大の字に手足を固定されている。
魔術師はいとおしそうにその体を撫でさする。
そのたびに女はうめき、あえぎ、そして男は狂喜する。
「くっくっく・・・これはなんだ？この刺青は？」
「う・・・」
びくびくと女の体が痙攣し、その肌には鮮やかな文様が浮かび上がった。
「この、闇の魔力に反応する刺青はなんだ！？」
一瞬で文様は消えてしまうが、魔術師の手の動きにつれて文様の浮かびあがる場所も移動する。
「ははは・・・いいぞ、お前。まさか光の魔法の使い手が、闇の軍団の裏切り者だったとは。道理で、シャザをも倒せるわけだ。見た目ではこの刺青はわからぬ。強力な魔力に晒されたときにだけ現れるのだからな」
魔術師はヒュームの全身の刺青を確認すべく手を這わせ、女体はその動きだけで蜜をもらし、快楽を吹き上げる。
「剣の紋章、盾の紋章。・・・わからぬものも多いな。面白い・・・ふむ、全身の気脈に魔石を埋め込んでいるのか」
魔術師は歓喜の表情をうかべて女の肉体を調べ続ける。
女は激しい快楽に意識が朦朧としているようだ。
「あう・・・」
女が苦しそうな声をあげる。
全身の刺青に供給する魔力が途絶えたため、刺青が彼女の体力を要求しているのだ。
「ほお・・・。さすがに闇の紋章術。趣味がいい。・・・魔石に蓄えられていた魔力も尽きたということか」
だが、このままでは貴重な実験材料を失うことになる。
しばし考えたのち、魔術師は邪悪な笑みを浮かべた。
「よかろう。お前の魔石に魔力を与えてやろう。・・・ただし、私の闇の魔力をな」
女の体にかすかな震えが走り、魔術師は満足そうな表情で手印を組みはじめた。
やはり、キャラバンは大して移動していなかった。
再三にわたる戦闘で、キャラバンの能力は大分落ちている。
キリエの目が食事の支度を示す煙の筋を数える。
ひい、ふう、みい・・・。
私達が全部で十一人だったから、敵そのものも四、五人は減っていそうね。
実際にはケガで戦力にならないものも多いはず。
ということは・・・。
キリエは素早く計算する。
人狩りや針使いの魔術師は無傷だとしても、傭兵の数は半減しているはずだ。
天敵とも言える耐魔戦士シャザ（ヒューム）もいないことを考えれば、救出の可能性はけっこう高いかもしれない。
キリエは懐から１枚の布を取り出すと石鹸のようなもので記号を書き込んだ。
それで鳥の姿をつくり、息をふきかける。
キリエの腕がそれを高くさしあげると、布で折られた鳥型はかすかな羽ばたきをして飛び立った。
後からやってくるライラ達は、この布を水に濡らせば、ロウで書かれた暗号を読むことができるはずだ。
「さて、まずはヒュームがどんな状態にあるか調べないとね。ヒュームが戦えれば話は早いのだけれど」
キリエはかなり離れた林に馬を止めた。
キャラバンの水場の川の下流にあたる。
ニ、三日だけその場に留まるように暗示をかけた。
状況によっては戻ってこれない可能性もあるので、つなぐことは気がひけたのだ。
人狩りは予定外のキャンプに少々いらついていた。
キャラバン全体で女たちへの調教が厳しくなったのは無理もないかもしれない。
大戦果で凱旋のはずが、１１名もの脱走を許し、傭兵達の半ば以上を失ったのだ。
仲間達を失い、傷ついた傭兵や馬たちの治療のために足止めをされている男たちはその鬱憤のはけ口を哀れな女たちに求めた。
ほとんどの女はすでに萎縮し、男たちに逆らうことなど考えもできぬ状態にまで追いこまれていた。
その上で、媚薬は定期的に投与されている。
男たちの容赦ない責めに、すでに肉奴隷となりさがった者もあった・・・。
「どうだ、あの女は？順調にいっているか？」
人狩りの不機嫌そうな声に、魔術師はニヤリと笑ってみせる。
「ようやく扉を開いたところだ。あと一押しといったところかな」
人狩りの唇が歪んだ。異様に長い舌で上唇をなめまわす。
「さすがだな。もうお前のものだとはいえ、たまには味見させろよ」
「フッ。少々惜しい気もするが、あんたと私の中だ。その時はゆずるさ、兄弟」
「ああ、頼むぜ、ぐふっふっふ・・・」
しばし今後のルートについて意見を交換すると、魔術師は人狩りに背をむけようとした。
首をかしげた人狩りが声をかける。
「待ちな、兄弟」
「何だ？」
魔術師は少々うんざりしながら振り返る。
この人狩りは腕も、それなりの頭脳もあり、彼にとっては扱いやすい相棒だったが、カンがよすぎるのが玉に傷なのだった。
「お前、疲れているのか？」
「ああ、少々手ごわくてね。あと一息なんだが」
「それならいいんだが・・・。まあ、お前のことだ、信用してるぜ」
魔術師は軽く手を振って人狩りの天幕を後にした。
一流の戦士だけあって、さすがに鋭い。
あの女に闇の魔力を注入しているために、少々体力が低下しているのを感じていた。
魔術師には専用の天幕が与えられていた。
そこにはあの女がつながれている。
今は媚薬を投与されていない。
ヒュームの体力の消耗を嫌った魔術師が投与を止めたのだ。
魔術師は女の気配に高揚感を感じながら入り口をくぐった。
女は天幕の柱に四肢のロープをくくりつけられている。
筋力の大半を奪われている女には、この華奢な天幕の柱さえもが絶望的な縛めなのだ。
こんなときでも女は美しい。
呼吸のたびにうごくなだらかな胸から腹へのライン。
薄暗い天幕の中で輝く滑らかな肌。
薄い敷布に銀の髪が広がった様は絵画のようにすら見える。
男は平静を装って声をかける。
「気分はどうだ？」
「気分？たった今、最悪になったわ」
何気ない会話の成立。
この女は自分の心が蕩けてきていることに気付いているのだろうか？
「気分が悪いとは思えないな。こんなに濡らしているじゃないか」
男は女の下腹部に手をやり、濡れた指を女の目の前ににつきつける。
白い肌がさっと紅潮する。
女が顔をそむけ、吐きすてるように言う。
「くっ・・・クスリのせいよ」
「墓穴を掘ったな。気付いていなかったのか？もうお前には媚薬を与えていないんだ。乳首もこんなにして・・・。この濡らし方、私の気配に気付いてのものだろう？いい加減に認めればいい」
「そんな・・・」
女の目が見開かれる。
ピンと立った乳首が女の呼吸とともに動く。
空気と触れ合ってすら刺激を感じる女の器官。
男は柔らかいふくらみの上に立ちあがった突起を指に挟んだ。
「あ・・・」
女は顔をそらし、唇をかむ。
少しでも快楽を押しとどめ、やりすごすために。
「無駄なことだ」
男の指がは乳房の周囲から円を描くようにして女の乳房を這いあがる。
頂上の突起はその指が近付くほどに勃起していく。
「・・・？」
途切れた動きに、あんなは一瞬間ってからため息をつく。
「ふふ・・・。期待していたか？」
女の顔がいっそう赤らんだ。
「だ・・・誰が！」
「お前がさ」
男は女の背筋をなであげた。
女の体はぶるぶるとふるえ、女は唇を噛んで快楽のほとばしりをおさえようとする。
「無駄だというのに、ほら」
男は女の下腹部に手をやった。
そのまま指を女肉の狭間に沈め、巧みに女の急所を突いていく。
「う、ああ・・・！」
水音というには粘着質な音がした。
「どこかの猫がおねだりしているようだな」
「・・・！！」
声も出さずにらみつける女を、男はあざ笑う。
「どうかしたのか？」
「・・・くっ・・・！」
女が顔をそらして体を緊張させているのを、男は面白そうに見下ろす。
男は指で女の肉裂を撫で、たたき、くつろげる。
そのたびに淫らな水音が響き、女は体をこわばらせる。
「お前の体にはもはや媚薬などいらないのさ。じきに快楽の針すらもいらなくなるかもしれないな。お前は素のままでも淫水を垂れ流す女になるのさ」
「う、うそ・・・！」
女は絶句し、女は目を閉じた。
まつげに涙がたまっている。
ふるふると肩が震わせて、女は声も立てずに泣く。
女の心の鎧は脱がされている。
ここにいるのはすでに裸の女ではない。
剥き出しになった気丈な女の心なのだ。
今すぐに屈服させることはたやすいだろう。
だが、それは惜しい。
この女を屈服させてしまうのは惜しい。
魔術師は、今しばらくこの状態を愉しみたいとさえ思っていた・・・。
続く