「さてイリーナ。お前の大切な幼馴染でもあり、兄貴分でもあるヒース兄さんは、大変困っている訳だな」
白髪の男はそう言いながら、全身に甲冑を着込んだ少女の肩を叩く。
男はまだ若い。装いから察するに魔術士であろう。
名を、ヒースクリフ・セイバーへーゲンと言う。
「・・・困ってるんですか?」
甲冑の少女は首を傾げてヒースに問う。
彼女の名はイリーナ・フォウリー。
剣士でもあり、ファリス神官でもある。
ごく平凡な・・・とは到底言い難い冒険者である。
「そう! 困っているんだなー。これがまたこの天才であるヒースクリフ様でも解決するには難しい大問題が発生してこのヒース様程ではないが最近結構と言うかめっきり力を付けてきたお前に手伝って貰いたいんだって言うか俺達はパーティーだからお前に選択権は無いだから今すぐ出掛ける準備をしろ砂糖水なんか飲んでないで出発だ解ったな?」
「・・・えっと・・・?」
一気に捲くし立てるヒースにイリーナが更に首を傾げる。
とりあえず言われた通り砂糖水は飲むのを止めた。
その様子を見かねたヒースが咳払いを一つし、ビッと人差し指を明後日の方向に向けた。
「単刀直入に言うと正義をしに行こうとゆっとるんだ」
「今すぐ行きましょう!」
その言葉さえ出れば、イリーナの決意は至極簡単なものだった。
ヒースの話し曰く、ここから二日程歩いた所に『キェムル』と言う村があるらしい。
そこで先日、何か得体の知れない怪物が出たらしいのだ。
「じゃあ、まだ被害は何も出ていないんですね?」
「うむ。だが悪の芽は早目に刈り取るに越した事は無いだろう。俺達がこうしている間にも誰かが犠牲に・・・」
「そ、それは大変です!すぐにでも助けに行かなければ!」
意気込むイリーナ。
しかしそこで矛盾に気付く。
相手は得体の知れない怪物。
ならばこちらも油断や手抜きは許されない。
なのに何故、自分とヒースだけで行く事になろうのだろうか。
「何でマウナやガルガドさんは来ないの?」
あえてノリスの名は出さない。
「何だ、忘れたのかイリーナ。マウナはおばちゃん達と旅行。おやっさんはジェイミーと一緒に神殿のお使いだ」
あえてノリスの名は出さない。
「あ、そうでした。ジェイミーが居ないから徒歩なんだよね。忘れてました」
「バカだなこいつは」
ヒースの投げ槍な物言いにイリーナの眉が微かに動く。
「でも珍しいですね。ヒース兄さんが自ら進んで正義を行うなんて」
「何を言う。俺は正義の固まりみたいな男じゃないか」
「ファリス様に謝って下さい」
「ゴメンナサイ」
イリーナの目が本気だったので素直に謝って置いた。
「ま、流石に二人じゃキツイかも知れんからな、こうして魔術士ギルドに足を運んだと言う訳だ」
ヒースが自らの学び舎を見上げ、小さく息を吐いた。
何故か冷や汗をかいている。色々と嫌な思い出があるらしい。
「ヒース兄さんの学び舎・・・つまりは悪の総本山ですね」
「何でじゃ」
強く剣を握り締めるイリーナにヒースが冷かかにつっこむ。
「ヒース兄さんが一杯居たら悪の組織です」
「何か色々言いたい事はあるが時間も無いしこんな場所に長居もしたくないからな。とっとと用事を済ませるか」
言いながらヒースは周辺を見渡す。
と、何か目的のものを見つけたのか、庭の方に向かって歩いて行く。
イリーナもその後を、ガッションガッションと音を立てながら付いて行った。
庭に設けられた噴水に一人の魔術士が座り込んでいた。
一見少女かと見間違える程、その少年は優し気で幼い顔立ちをしていた。
水兵帽の様な帽子を被り、白と水色の折り重なったローブを着込んで、噴水の淵に座る様子は、魔術士と言うより神官に思えた。
「ここに居たか、エルト」
「あ、ヒース先輩」
名を呼ばれて少年はヒースの元に駆け寄る。
その際にイリーナの姿を見て、軽く会釈をして来た。
「誰ですか? ヒース兄さん」
「俺の後輩のエルトロム・バグ・フェンリスだ。今回の仕事に同行して貰う」
「宜しくお願いします。イリーナ・フォウリーさんですね? 噂は聞いています」
噂と言うのは色々あるだろう。
ファンの街を走り回るもび○すーつだとか、悪魔も跨いで通る、デビまたのイリーナとか。
「初めまして、エルトさん。一緒に正義を貫きましょう!」
イリーナの声にエルトも負けじとはい!と元気良く応える。
中々の好青年、もとい好少年だとイリーナは感じた。
「魔術士なのに礼儀正しくて良い人ですね。私、魔術士ってヒース兄さんみたいなのだけかと思ってました」
「みたいなのって何だ?」
「お金や権力にばかり目が行く邪悪です」
キッパリ言い放つとヒースは反論出来ずに黙り込んだ。
その様子にエルトが小さく吹き出して笑う。
「あ、すみません。やっぱりヒース先輩の言ってた通りの人だなぁって」
「ヒース兄さんが・・・?」
「ええ、何時も楽しそうに貴女の話しをしてくれるんですよ」
中空を見上げ、指折り数えながらエルトは楽しそうに話していく。
「どんな料理でもものの三十秒で平らげる頑丈な胃の持ち主だとか。それと、トロールに素手で勝つ程の実力を兼ね備えているんですってね」
呆然と立ち尽くすイリーナの後ろで、ヒースが段々と小さくなって行く。
それに構わずエルトは続けた。
「ドラゴンを家畜にして乗り回すとか、帽子の中にはキノコがあるとか、実は男とか、実は龍族とか、実は魔人とか・・・」
「汝は邪悪なりいぃぃぃぃぃぃぃっ!」
大剣を振り回しながらめっきり小さくなってしまったヒースを追い掛けながらイリーナが叫ぶ。
だが哀しいかな。ヒースはすでに豆粒程の大きさまで逃げている。
でも追い付いた。
「逃げるとは卑怯ですよ、ヒース兄さん」
「何を馬鹿な! 誰が逃げて等いるものか! 両足を交互に動かしながら全身の力を振り絞ってお前から遠ざかってるだけだ!」
「そういうのを逃げるって言うんです!」
「せめて戦術的撤退と言え! あ、イリーナ! 今日のお前は凄く乙女っぽくて良い感じだ今度昼飯奢ってやろう武器屋にデッカイ剣が飾ってあったぞ親父さんが元気になったてヒース兄さんはそろそろ真面目に生きようと思い始めた・・・」
イリーナの喜びそうな言葉を幾つ並べても無駄であった。
センスイービル(相手が邪悪かどうか感知する神聖魔法)を使えばネオンライト並に光る事間違い無しのこの男は、無残にも罰せられた。
その日の夜は野宿であった。
ジェイミーはおやっさんが持って行った為、イリーナ達は徒歩でキェムルまで向かう。
それには少なくとも一日はこうする羽目になる。
ヒースはとっくに寝付いてしまったが、イリーナは長旅の疲れが溜まり過ぎたのか、眠気はあるのに夢の中に入れないでいた。
「眠れないんですか?」
「あ・・・エルトさん・・・」
「エルトで良いですよ」
笑いながら答える少年にイリーナは頷く。
見た所彼の方が年下なのだし、それが普通なのだろから。
「今日はずっと歩きっぱなしでしたからね。でも明日も歩くんですから、眠って置かないと大変ですよ?」
「う~・・・解ってるけど、どうも身体が言う事聞いてくれなくって・・・」
ふいに、イリーナの前にカップが一つ差し出された。
イリーナは困惑顔をしながらそれをエルトから受け取る。
「眠くなれる薬の入ったミルクです。ボクの調合ですから、効き目は期待出来ませんがね・・・」
照れ臭そうに言うエルトに礼を言い、イリーナはそれを一気に飲み干した。
途端、眠気が彼女の全身を駆け巡る。
「あ・・・効いてきたみたい・・・」
「良かった。それじゃ明日も頑張りましょう。イリーナさん、お休みなさい」
「うん・・・エルト・・・お休み・・・」
夜中。
何故かイリーナは突然目が冴えてしまった。
理由は、異常なまでの身体の疼き。
「っ・・・何? 身体が・・・」
激しく震える身体にイリーナは戸惑う。
一瞬、何かの病気と思ったが、すぐにそうではない事を悟った。
身体が求めている。
「う・・・痒い・・・苦しい・・・」
だがファリス神官としてそんな行いは持っての他である。
今までもこういった事はあったが全て自分に言い聞かせて堪えて来た。
だが、今日の痒きは別物だった。
今にも自分の理性が吹き飛びそうになる。
「駄目・・・こんな・・・ヒース兄さんとエルトが寝てる所で・・・」
ならば
居なければ良いのか?
誰にも見られなければ良いのか?
誰のものか解らぬ、頭の中に直接響いて来るその呟きに応える様に、イリーナの足は自然と森の中へと進んで行った・・・。
「・・・っ! はぁ・・・」
クチュ チュク クチャ
イリーナは自分の手をスカートの中に差し入れ、下着の上から何度も何度も秘所を擦る。
もうすでに彼女のそこからは愛液が染み出していた。
自分の下着が濡れていくのが解る。
「う・・・こんな・・・ファリス様に反する様な真似・・・ひいうっ!」
充血していた豆に爪が軽く当たる。
快楽と罪悪感に彼女は頭を悩ませた。
「こんな事・・・しちゃ駄目なのにぃ・・・でも、でも・・・はぁんっ!」
擦る速度を速めた為か。
勢い余って指が秘所の中に下着もろとも軽く沈む。
「ひう・・・あんんっ! はぁ・・・駄目、もう・・・こらえきれないよ・・・」
そこで我慢は限界だった。
イリーナは心中でファリス神に謝り、自分の足から捨てる様に下着を脱ぎ捨てた。
そしてはしたなく両足を開き、自分のそこを激しく慰め始める。
「んく・・・はぁうっ! いい・・・いいよぉ・・・気持ちいい・・・くうんっ!」
指で豆をころころと転がし、秘所の縦割れに沿って指を往復させる。
「ああ・・・ファリス様、ごめんなさい。でも・・・気持ちいいのぉ・・・あんっ! はぁぁ・・・ひゃんっ!」
夢中で自分の身体を辱めるイリーナ。
ファリスの神官としてのプライドは、今の彼女には存在していなかった。
夢中になり過ぎていたからだろうか。
何時もの彼女なら野生のカンとやらで解る気配を、掴み損ねてしまった。
ガサッ!
「っ!?」
草むらから一人の人間が姿を現す。
意識はぼうっとしていたが、その姿は見間違える事もなく・・・
「え、エルト・・・?」
チュクッ
「んんあっ! はぁうぅっ! あぁぁぁあぁぁああっ!?」
驚愕の余り、指が滑って内部へと深く潜り込んだ。
その衝撃にイリーナは初めての絶頂へと陥れられた。
(エルトに、見られた・・・っ!)
羞恥に顔が急激に熱くなるのを感じながら、初めての絶頂に、イリーナの意識は薄れていった・・・。
続く