王宮の敷地内、その中の一番高い塔にフェリシアの寝室が有った。その塔は王宮に出入りする者だけでなく市民からも「夜、賑やかな塔」と言われている。
理由は“夜な夜なフェリシアに、責め嬲られて、エリスが泣く嬌声が響いて来る”からである。
マアそんな理由で毎晩の様に、ベッドの上で犯されるエリスの悶え声が響き渡るのだが、気を付けて聴いていると声が二通り有るのが聞き分けられた。
一つは普段流れて来る「鳴き声」である。フェリシアに可愛がられているエリスの、恋人に甘える「甘い鳴き声」が宮殿内に響くのだ。
もう一つは「泣き声」であり、フェリシアの機嫌を損ね御仕置きされるエリスの悲鳴が、鞭音などと共に塔の中から流れて来るのである。
そして今晩は・・・如何やら後者が流れて来る様である。だが普段と様子が違う。「泣き声」が流れる時は、エリスの懸命に許しを乞う謝罪の声が一緒に聞えて来る筈なのだが、今日はそれが
聞えて来ないのだ。
それどころか今回は、エリスがフェリシアに逆らっているらしい。こんな事は初めてであった。
白いドレスを纏ったフェリシアは、肩で息をしながら皮のパドルを投げ出した。相当怒ってるのは見た目で判る。
その前には両手を左右に開き、その腕をベッドのポールに縛られたエリスが、尻を紅く染めてすすり泣いていた。
鞭と違い広い殴打面積のパドルは、叩かれたお尻が全体的に紅く染まり傷を負う事も少ないのだが、それでも打たれる者に取って大きな苦痛と羞恥を伴う事には違いは無い。
「エリスッ!何時までも強情張ってるの?この私に逆らうなんて如何言う気なのかしらっ?」
フェリシアの口調も大分キツイ。何せエリスが正面を切ってフェリシアの命令に逆らったのは始めての事なのだ。
勿論フェリシアに非が有ったり、正当な理由がある場合は別にしてなのだが、今回は違うようである。
「陛下、どうか御容赦下さい。エリスはその命に従う事が出来ません・・・・・」
フェリシアの顔に怒りが浮かぶ。フェリシアはテーブルの上に有った燭台を掴むと、エリスのお尻の上で傾けた。
途端に熱蝋がエリスの双臀に降り注ぎ、絹を裂くような悲鳴が響く!無数の赤い斑点が白い双臀に刻まれ、増える毎にエリスの肢体はビクンビクンと跳ね上がった。
「キャアーーーッ!アツッ、熱いーーーっ!許して、許して下さいっ!如何かエリスに御情けを・・・・・・・」
身体をくねらせて熱蝋から逃れようとするエリス、しかし縛られて逃れられる筈も無い。
熱い雫がエリスの敏感な尻に当る度、エリスの口から呻きが漏れる。
しかも蝋がエリスの双臀を覆うと、パドルの打撃が尻を打ち、其れを弾き飛ばすのだ。エリスは狂ったように頭を振り、涙を千切ってフェリシアに許しを乞うのだが、赤い雫が止まる事は無かった。
フェリシアは蝋を垂らす手を一旦止め、エリスに厳しく言い放つ。
「エリスッ!赦して欲しければ素直に言う事を聞きなさいっ!我が国の海軍提督に就任するのです!」
そう・・・フェリシアは今日、議会でエリスに帝国の海軍提督に就任する事を命じたのだ。
この国でフェリシアは皇帝であると共に国内最大規模を誇る「自然崇拝宗教」の教主でもあり、更に帝国全軍の元帥でも有る。
様々な事件や理由が絡んだ結果だが、それは長い帝国の歴史でも初めての事だった。しかし最近フェリシアも流石に一人で三役をこなすのに限界を感じ、
エリスを提督に就任させ近い内に元帥を任せようと考えたのだ。
しかし可愛がっているエリスをエコ贔屓した訳ではない。能力と忠誠心を吟味し、且つエリスを除く帝国の将軍全員で会議を行い、全員で一致した結果なのである。
今帝国にはエリスを含め、八人の将軍が居る。フェリシアの政策上、実力の揃った歴戦の猛者達を揃えたのである・・・が、その内五人は頭が悪い訳では無いのだが
軍の指揮は兎に角、運営を効率的に行えるタイプと言えず、どちらかと言えば軍の先陣を切って戦う方が向いている、武人系もといハッキリ言って筋肉系の軍人達だった。
そしてズバリ「知性派の軍人」に該当するのはエリスを含む残りの三人だったのだが、如何せんエリス以外の二人は老体で長く職務を勤められそうに無い。
だからエリス以外の将軍達とフェリシアは内密に会議を重ね「この際若いエリスを提督にして老将軍二人が相談役になる。そしてその後、実務を積ませてから出来るだけ近い内にエリスを元帥に就任させる!」と言う結論に達したのだった。
しかし老将軍は「エリスは、この話を受けないかも知れない。」とフェリシアに忠告した。エリスが先輩である自分達に遠慮すると思ったのだ。
だが等のフェリシアは「私が頼めば大丈夫!」と断言した。肩入れ無しで公正に選んだ上での人事だったからだ。
しかし幾等頼んでもエリスは首を縦に振らず、仕舞にはフェリシアが怒り出してしまったのだ。
フェリシアはエリスの反応を見た。明らかに脅えてるのに目を閉じ、奥歯を噛締めるとフェリシアの命令に逆らった。
「その話を受ける訳にはいきません。如何か御赦しを・・・・・」
フェリシアの頭に血が登った。空かさず燭台を傾けエリスのお尻に熱蝋を降らせる。赤い雫は尻に背中に太腿に降り注ぎ、エリスの肌を焦がして行く。
「アウッ・・・クゥ・・・・・・・・」
今度は悲鳴を押し殺し、必死に耐えているエリス。
だがフェリシアにはその態度すら癪に障る。
なにせフェリシアは別にエリスを贔屓した訳で無く、公正に判断した積りだった。
もし個人的な理由から受けられないか、この人事に意義が有るならフェリシアに言えば良いのだ。
その理由すら言わないのは納得が行かない。
フェリシアはエリスのアヌスに乱暴に指を二本突っ込むと指を広げ、無理やり肛門を開き広げる。
「痛ァーーーイ!痛っ、痛いっ・・・・・ウウッ、御願いです。赦して下さ・・・?!ヒッ、ヒィーーーッ、熱ッ、熱ゥーーーッ!後生です。許して、許してーーーっ!」
エリスは涙を振り千切って泣き叫ぶ。
無理やり開いた肛門の中に蝋を垂らされたのだ。コレはたまったモノで無かった。排泄器官に熱い蝋が流れ込み、ピンク色の腸壁を焼き付いて行った。
「何故そんなに逆らうの?理由を述べなさい!」
「そ・・・それは・・・・・」
エリスが言えないで居るとフェリシアは別の火が点いてない燭台から蝋燭をもぎ取った。
螺旋状の捻りが飾りに入った大き目の蝋燭である。それを有無を言わさずエリスのアヌスに捻じ込んだ。
「ギャーーーッ!」
エリスは悲鳴を上げた。堅く太い蝋燭を捻り込まれるのは大変な激痛を伴う。
フェリシアは螺旋に沿って回転させて蝋燭をエリスのアヌス、奥深くまで進入させる。更に熱蝋も降り注いで来た。
「ウウッ、グスン・・・許して、お願いです。陛下・・・陛下ァ・・・・・・・・」
エリスはもう抵抗しなかった。ただフェリシアの赦しを大人しく待っている。だがエリスが説明しな
ければフェリシアは絶対に赦しそうも無かった。或は・・・・・
「エリス・・・いい加減にしないと・・・・・・・」
フェリシアが怒りを爆発させる。突き入れた蝋燭を乱暴に動かしながら、熱蝋を注いだ。
堪らずエリスはフェリシアに許しを乞いながら、声の限り泣き叫んだ。
その時、扉が開いて何者かが入って来る。
「陛下、それ位で赦して上げて下さい」
エリスはフェリシアに許しを乞いながら、声の限り泣き叫んだ。
その時、扉が開いて何者かが入って来る。
「陛下、それ位で赦して上げて下さい」
侍従長のジニーで有った。
「全く御付きの侍従が泣きながら走って来たので、何が有ったかと思ったら・・・エリス様っ、貴女も良く考えなさい!
言い難いのは解りますが黙っていても、陛下の御心を傷付けているだけなのですよ!」
ジニーはエリスも叱り付ける。それを聞いて驚いたフェリシアはジニーに詰問した。
「ジニーは理由を知ってるの?」
ジニーはエリスの縄を解きながら説明した。
「エリス様は他の方を提督に推したいのです」
フェリシアは驚いた。帝国内にエリス以外に適任者が居ただろうか?
「それは誰なの?だったら何で言わないのよ!」
「アンジェラ様です。エリス様はずっとアンジェラ様の行方を捜して居られました。遂この間、やっ
と所在が・・・・・・・」
「おっ・・・お姉さま~~~っ!」
フェリシアは素っ頓狂な声を張り上げる。
アンジェリア・ウィン・ラ・バルバリアス、フェリシアの実の姉で帝国の第一皇女である。
通り名は「赤い疾風のアンジェラ」と呼ばれ、エリスが現れるまではアヴァロン最強と謳われていた女剣士でも有った。
先代皇帝が男子に恵まれなかった為、本来は長女であるアンジェラが女帝に成るか、婿を取って皇帝にする筈で有ったのだ。
だがアンジェラは幼い頃からフェリシアに“父親の面影”である名君の資質を見出した。
アンジェラはフェリシアに次期皇帝の座を譲ると「フェリシアの基盤が固まるまで、自分が居ては騒乱の種になる」と国を出て行方を眩ましたのだった。
エリスはアンジェラに面識は無い。しかしフェリシアの姉であり、しかも幾等資質を見出したといえアッサリと帝位を妹に譲る・・・・・中々出来る事では無いと思っていた。
仲違いを起こして分かれた訳でないのだから、出来る事ならアンジェラを国に戻し、然るべきポストに迎えたいと思っていたのだ。
「そんな事なら何で言わないのよっ!」
フェリシアはエリスを怒鳴り付ける。幾等フェリシアがサディストだからと言ってもココまで苛烈な拷問を咥えたい筈も無い。
今日の責めは地下ドームの刑罰よりはマシだったかも知れないが、それでも拷問に近いレベルの責めである。
「エリス様には言えませんよ。そもそも陛下は何でエリス様を提督に推したんです?」
「今の帝国内で知識、人徳、経験共にエリスが相応しいからよ。まして武人としてもアヴァロン随一、贔屓はしてないわ!他の二人は御老体だし、他の将軍は武人としては一流だけどオツムの方は今一つだもの!」
酷い言い方だが事実だった。そこでジニーは諭す。
「アンジェラ様はどちらに属します?」
「それは武人としてでしょうね。暫く会ってないけど、そんなに劇的に変らないでしょうし・・・・・成る程」
エリスは武人としても超一流であり、帝国内の騎士・戦士・格闘家あらゆる人材の中で一対一なら誰にも負けないと言われているが、それ以上にフェリシアがエリスを推したのは“頭が良い知性派の軍人”だったからである。
だから対照的に肉体派のアンジェラを推し難かったのだ。フェリシアの人事理由に真っ向から対立してるのだから。だが、それだけで此処まで反抗するだろうか?
「エリスッ、其れだけの理由でココ迄逆らった訳では無いでしょう?本当の事を言いなさい!」
「も・・・申し訳有りません。わ・・・私がアンジェラ様を推しても陛下はアンジェラ様を私より下の地位に配すると思いました。陛下の姉上を私の下になど・・・・・・・・」
確かにその通り、フェリシアは全て納得した。フェリシアはエリスにアンジェラを推薦されても間違い無く提督には就任させないだろう。
どう考えてもエリスの方が頭が良く管理職に向いてるのだ。提督の上は元帥しかいないからアンジェラがドコに就任してもエリスより位が下になってしまう。
また生真面目なエリスの事、議会で推薦した時に他の将軍や大臣に突っ込まれた場合、まさかフェリシアの姉を“肉体派”だの“頭は足りないけど・・・”と言う意見を出されたくないのである。
「それで就任を拒否したのね?お姉さまを推す事も出来ずに・・・・・・」
フェリシアは、すすり泣くエリスを見下ろして唸った。それを見てジニーが声を掛ける。
「エリス様を許して上げて下さい。陛下に本心を打ち明けない事は御怒りでしょうけど、すべて陛下やアンジェラ様の事を思っての・・・・・・・」
「駄目ッ許せないわ!」
フェリシアが即答した。エリスのお尻から蝋を剥しながらエリスを叱る。
「いくら私が意地悪だからってこんなにも酷い責めを喜んでやってると思ったの?それに隠し事は、しないと約束したばかりでしょう!」
フェリシアはエリスのお尻から蝋燭を引き抜くとドレスの前を肌蹴た。何時の間にか魔法のリングは装着されフェリシアのクリトリスは巨大なペニスに変っている。
「隠し事も嘘吐きと同じです。さあ、嘘吐きはどんなお仕置きをされるか分ってるわネ!」
エリスはオズオズとフェリシアにお尻を突き出すと、こう呟いた。
「ゴメンなさい陛下・・・・・・・・」
フェリシアはニッコリと笑うとエリスの秘所に腰を押し付ける。
ジニーは侍従達を伴い部屋を出た。結局エリスは朝まで虐め抜かれるだろうが、フェリシアもエリスの隠し事がフェリシアの事を思った上での事と分った筈だ。余り厳しい御仕置きを与えないであろう。
ジニーが塔を出ると同時に上の方からエリスが絶頂を迎えた叫び声が聞こえて来た。
翌朝フェリシアはレイを伴い、一人で帝国議会に現れた。
案の定エリスを責め過ぎてしまい、動けない様にしてしまったからだ。エリスには“フェリシアに逆らった為、謹慎!”と言う名目で療養させていた。
フェリシアが会議室に入ると、既にエリス以外の将軍が勢揃いしている。
「その御様子では、やはり説得には失敗した様ですね?」
第二騎士団のガラハドが言った。フェリシアに筋肉系と断じられた将軍の中では最も頭が良い。筋肉系の中で唯一エリスが提督就任を断ると予測していた。
「それだけだったら時間を掛けて説得出来るんだけどね・・・・・・・」
フェリシアが言うと、横から混ぜっ返される。
「ベッドの上で拷問に架けて言う事を聞かせる・・・の間違いでは?」
途端に悲鳴が上がった。余計な事を言った第五騎士団サイモンの脛をフェリシアが蹴り上げたのだ。
「馬鹿は放って置いて、“それだけ”とは如何言う意味ですか?」
第六騎士団カミーラだった。エリスを除けば唯一の女将軍である。
「実は・・・・・・・」
フェリシアは説明した。
「やはり・・・理由も無くエリスも陛下に逆らう訳が無いと思いました。しかし陛下は如何するのですか?」
カミーラの問いにフェリシアは即答した。
「私の肉親だからと言って、それだけで国の要職に就ける訳には往きません。エリスも同様、ただエリスには資格が有ったから提督に推したのです」
フェリシアの性分を考えれば当然の答えだ。
「しかし・・・それではエリスは絶対に提督には就かないでしょう。あの娘の性格から言って・・・・・・・・」
初老の老騎士が言った。第三騎士団のエルギスだ。彼と第零騎士団のエリスそして第一騎士団のフォレスがフェリシアの言う“知性派”の三人だった。フェリシアが溜め息を吐くと、そのフォレスが言った。
「ですが陛下、確かにエリスの言う通りアンジェラ様に提督を任せるのは良いかも知れません。第一に陛下とアンジェラ様は仲が良く、お互いの長所を認め合ってます。アンジェラ様なら他国の王室の様に、皇帝の椅子への固執して内紛を起こす心配は有り得ません。最高の忠誠心を示してくれるでしょう」
フェリシアが面白く無さそうに頷いた。フォレスの台詞でエリスを提督にするチャンスが遠退いた様に感じたのだ。
「第二にアンジェラ様が提督に成れば軍の指揮も上がります。元々武勇に事欠かない方ですから・・・・・」
フォレスは更にフェリシアに進言した。
「第三にアンジェラ様も、この数年で大分成長為されました。確かにエリスに比べ提督に向いてるか疑問も残りますが、それ程劣る事も無いでしょう」
「ちょ、ちょっと待ってよ!フォレスはお姉さまの事を・・・・・・・・」
フォレスはフェリシアに謝った。
「申し訳御座いません。実はアンジェラ様に口止めされてましたが、ずっと行方は掴んでいました。エリスに教えたのも私です」
考えれば当然かも知れなかった。フォレスはアンジェラの剣の師匠で出国の際、挨拶位した筈だ。
「じゃあ何処に居るかも知ってたんだ・・・・・」
最もフェリシアに言えば、アンジェラを連れ戻そうとするだろう。そうすればアンジェラの気持ちが無駄になる。
「じゃあアンジェラ殿下は一体何処に・・・・・・・」
カミーラの問いにフェリシアは言った。
「ジェラルド伯父様の所よ!其処で将軍職に就いているの」
フェリシアが治めるアヴァロン帝国と大洋で隔てた大陸に、アルカディア帝国が有る。
アヴァロンとは友好国で皇帝ジェラルドはフェリシアとは親戚関係であった。皇帝ジェラルドの王妃クローディアはフェリシアの母親、前アヴァロン帝国皇妃シルビアの妹で有ったのだ。
「ソイツは不味いですな・・・幾等友好国でも軍の上層部に在籍した人物を、簡単には出国させんでしょう。まして我が国で軍に入る為なら、尚更・・・・・・・・・」
エルギスの言葉をフェリシアが遮った。
「伯父様は其処まで人間が小さくないわよ。エリスは手紙で伯父様からアンジェラお姉さまが望むなら、退任と出国を認める許しを貰ったそうよ」
フォレスが言った。
「流石、エリスは手回しが早いですな。陛下エリスの気持ちを無駄にしないで今回はエリスの意見を聞いて上げて・・・・・・・」
だがフェリシアはフォレスに言った。
「でも皇帝である私を差し置いて隣国と合議するなんて越権行為も良い所よ!ましてや我が軍の最高人事に関する・・・・・」
「陛下、軍の人事や事務を全てエリスに押し付け・・・イエ任せたのは何方でしたか?」
フェリシアだった・・・だが、
「だからと言って私に一言も報告が無いのは如何言う事?」
言える筈が無い・・・言ったら邪魔されるのは分ってるのだから。
「エリス~~~ッ、見てなさい!私を蔑ろにする娘は御仕置きなんだから・・・・・・・・」
またフェリシアの八つ当たりが始まった。その場に居た騎士全員がエリスに同情する。
数日後エリスは少数の護衛とフェリシアの代理である文官を伴い帝国国境の港町に向った。帰国する新提督アンジェラを迎えに来たのである。
あの夜フェリシアは気が済むまでエリスを嬲り抜いた。だが必死でアンジェラの採用を願うエリスにフェリシアは漸く折れたのだった。
ジェラルド皇帝の許可とアンジェラの承諾を経て、今日アンジェラはアヴァロンに帰国する。ただ次期が悪く海流が逆らってるので、この田舎町まで馬車で迎えに来たのだった。
しかし、そのエリス達を包囲する集団がある。目付きの鋭い一癖も二癖も有りそうな連中だった。エリスは未だ気が付いていない・・・・・・・・・
「遅れるなっ!其の侭、走り抜けよ!」
エリスの命で馬車が疾走した。
包囲が完成する前に気付けたのは流石にエリスだと言える。
だが文官が敵に渡れば、拷問などで情報を聞き出される可能性があった。そうしたら帝国の最重要人物である皇帝が、近くに居る事が分ってしまうだろう。敵が只の盗賊か政治的理由からの襲撃者かは分らないが、絶対に情報を漏らせなかった。
幸な事にアンジェラにはアルカディアから護衛が就いている筈である。もし迎えのエリスが現れなければ異変に気が付いて引き返す筈であった。
「エ・・・エリス様っ!アレは・・・・・・・・」
兵士が指差す方向で、地面が盛り上がった。地面が盛り上がり、中からゴーレムが出現する。土中にゴーレムが配置してあったのだ。
不味いとエリスは思った。今日の護衛はエリスの部下で無く、文官の護衛兵だ。エリスは自分の部下を連れたかったが、今日のエリスは任務で来たのでは無く、アンジェラへの挨拶に来ているのだ。無理に自分の部下を連れて文官の顔を潰せない。
更にフェリシアの護衛に人員を割いたのも原因の一つで有った。
エリスは覚悟を決めた。剣を引き抜くと文官に怒鳴る。
「私が正面を切り開きます。その後を突破なさい!私は敵の足を止めますから、峠の先で私の部下に・・・・・・・」
そう言ってゴーレムの群れに切り込んだ。その姿を崖の上から見下ろす人物が居る。
「皇帝フェリシアに握られし白銀の剣・・・か?お手並み拝見と洒落込もう」
だが、この人物は数分後には冷や汗を流す事になる。
ゴーレムは鋼鉄で出来た“メタルゴーレム”だった。魔法金属や希少鉱石で造られたゴーレムを別にすれば最高の破壊力と耐久力を持っている。相当上位の魔術師が近くに潜んで居るのだろう。だがエリスが剣で切り裂くと、まるでバターの如く滑らかに切り裂かれた。
文官はエリスが切り開いた道を馬車で走り去った。ゴーレムが出ているのに先回りは有り得ない。戦いの後ゴーレムの回収に人出が要るからだ。使い捨てにするには、これほど良く出来たゴーレムは製造に手間が掛かりコストが高過ぎる。それにゴーレムを回収し先回りする程の人手が出てるなら、最初からエリスに勝ち目は無い。だが、それだけの軍隊が帝国内で動けばエリス達も感知できる筈である。
鋼鉄のゴーレムを相手に魔法は殆ど効かない。破壊する程の強力な魔法を唱える時間は敵も与えまい・・・・・・それなら切り裂くばかりだった。
エリスは剣を鞘に収めると背中のハルバードを抜いた。そしてハルバードを振り上げるとゴーレムの群に突撃する。
「バ・・・バケモノだ!」
虎の子のゴーレムが為す術も無く切倒されて行くのを見て、崖の上の人物は唸った。
確かにエリスは単身なら大陸で一番強いと言われていた。否、隣の大陸を含めてもエリスに敵う強者は殆ど見当たらない。エリスと互角に戦える強者と言えば、少なくとも現在ではアルカディアの竜戦騎と言われる勇者、アルカディア帝国の第二皇子位であろう。しかしゴーレムの小隊相手に魔法無しで戦える人間など聞いた事が無かった!
十数体居た筈のゴーレムの残りが10体切った所で、ようやく崖の上の人物は部下に撤退を指示する・・・しかし手遅れだった。残ったゴーレムを蹴散らし、エリスが疾走し始めたのだ。その眼は、崖の上にいる襲撃者達を見詰めている。
逃げようとした襲撃者の前に立ち塞がるエリス!中心に立つ身長2m以上有る仮面で顔を隠した筋肉質の大男が首領に違いない。
「武器を捨てなさい!抵抗も逃亡も許しません。逆らうなら・・・・・・切ります」
首領の大男は、意外と高い声で怒声を上げた。
「貴様がアヴァロンの聖騎士のエリスかっ!噂以上の腕前だ・・・・・・」
とイイながら爪先で土を蹴り上げる。エリスの目潰しを狙ったのだ。だが体を捻って馬から飛び降りると、脇から抜けようとした数人の敵を殴り飛ばした。切り伏せても良いのだが、それには相手が弱過ぎる。エリスとまともに遣り合えるのは、中心の大男だけであろう。
「抵抗は許さないと言った筈です。次は斬ります・・・・・・・・・」
賊の間に緊張が走った。大男はグレートソードを引き抜いてエリスと対峙する。エリスもハルバートを投げ捨て、剣を引き抜く。この大男は確かに出来る・・・と確信しながら、しかしエリスには及んでいなかった。
大男の剣が回転しながら吹き飛んだ。エリスの剣に電撃魔法が篭められており、感電したのだ。慌てて腰の剣を引き抜くが、自慢のグレートソードでも及ばなかった相手だ。普通のロングソードでは相手に成らない!
「ほ・・・本当のバケモンだ・・・・・・・・」
仮面の大男が呟いた。勿論エリスの事を言っている。エリスは背後から追い付いたゴーレムと大男、その配下の賊を相手に一歩も引かなかったのだ。
そもそも大男はゴーレムが追い付く事を見越し、そのゴーレムと連携して逃げる積りだったのだ。ところがエリスはゴーレムと大男を相手に立ち回りながら、賊の一人にも逃げる隙を与えなかったのだ。すでに逃げようとした賊の何人かは、エリスに殴られ失神している。そのうえ最後のゴーレムが、今エリスの足元で崩れ落ちて行く。
第一ゴーレムを相手に戦うなら、パーティーで一体を相手にするのが定石だった。十八体ものゴーレムを一人で相手になど常識では考えられない。更にエリスは賊を一人も逃がしていない。それだけの戦いを繰り広げながら、逃げる隙を見せなかったのだ。正に人間の業ではなかったのだ。
このままでは全員が殺される!大男は一歩退いた。だがエリスの頬を伝う汗を見て閃いた。
「オマエ等っ、アンチマジックフィールドを展開しろ!エリスを包囲するんだ」
エリスの背中に冷たい物が走った。次の瞬間、本能的に大男に切りかかるエリス、だが焦りが有ったのか、動きを読まれ避けられてしまう。しかも次第に体が重くなり、動きが鈍くなってきた。アンチマジックフィールドが効果を表したのだ。大男は言った。
「な・・・なるほど、自分に魔法を掛けて疲れを回復してたんだな。考えれば一人で剣術と魔法を行使するオマエだ。体力が持つ筈も無い」
ついにエリスは片膝を突いてしまう。ゴーレムさえ居なければ全員を楽に捕らえられただろう。
「だが、だからって18体のゴーレムを一人で潰せる訳が無いっ!このレベルのゴーレムなら一体で一般兵300人分の戦力になるんだぞっ!“漆黒の斧”が簡単に潰される筈だ・・・・・・・・・」
立ち上がろうとするエリスの身体が、再び沈んだ。両膝だけでなく左手も地面に突いている。それでも右手の剣は大男を指して動かなかった。
「お前は本当に人間か?エッそんな・・・・・」
エリスは苦しそうに、しかしユックリと立ち上がった。剣は相変わらず大男の顔を指している。
「馬鹿野朗!フィールド結界を展開する時には重力魔法も使えと・・・・・・」
「つ、使ってます。しかも魔法は防御されてません!アイテムも使ってないっ・・・そ、そんなっ!確かにヘビィティのレベル5がっ!」
「じ・・・自分の体重や装備が32倍だぞっ!それで立ち上がるのか?」
「だ・・・駄目ですっ!魔力が持ちませんっ!」
ブツッ!と音がして、エリスの足元に巨大な魔方陣が、一瞬浮かび霧散した。だが力尽きたエリスも、糸が切れたように倒れてしまう。
大男は弾けたように飛び掛り、エリスの腹部を蹴り上げた。無言で跳ね飛ばされエリスは、立ち木に叩き付けられ地面に転がった。苦しそうに顔を上げ、やっとの思いで声を絞り出す。
「ガハッ、クッ・・・貴方達は一体何者・・・・・・・」
薄れ行く意識の中でエリスは詰問する。だが大男は黙って再び、エリスの腹を蹴り上げる。視界が暗転し、エリスは気を失った。頭の中で戦いながら感じた違和感について考えながら・・・・・・首領の大男は別に、賊全員が若い女だったのだ。
「じょ・・・冗談じゃ無い!本当のバケモンだ。アヴァロンは・・・いやフェリシアは、こんな怪物を飼ってるのか?」
大男はグレートソードを取り上げた。エリスの細身の剣には刃こぼれ一つ無いのに、このグレートソードはノコギリ刃の様にボロボロだった。しかも大男が持ち上げた途端、ソードはチンッと音を立て、真っ二つに折れてしまった。
「馬鹿なっ!この剣はオリハルコン製なんだぞ!し・・・信じられん・・・・・・・・」
呟きながら地面に倒れているエリスを見る。
「こんなバケモノ飼ってたら、国だって滅びる・・・・・・・・・」
フェリシアが聞いてたら大きな御世話だと怒るだろう。
「帝国の本体が来るかも知れないっ!スグ撤収する」
慌てて賊達は逃げ支度を始めた。
「馬車は要らんっ!あれじゃゴーレムは只のゴミだ。だがコイツは連れて行く」
大男は乱暴にエリスの髪を掴むと、顔を覗き込んだ。その顔は女神の様に美しく、そして幼子の様に、あどけなかった。
「ううっ、コ・・・ココは?」
エリスは洞窟か地下室らしい部屋に居た。しかも両手首を縛られ、その腕を天井の滑車から吊るされている。エリスは倒れ、誘拐された事に気が付いた。頭を振ってボヤケタ視界を定めようとする。
「彼等は一体・・・・・・ハッ!」
「お目覚めかい?」
背後から声を書けられた。身体を捩ると背後には仮面の大男を先頭に、50人ほどの賊が立っていた。気付かなかったとは、マダ意識が朦朧としている様である。
「あの馬車が逃げる時間稼ぎだったんだな?自分なら捕まって拷問に掛けられても黙り通す自信が有ったのだろう」
図星であった。エリスは首領の顔をキッと睨み付ける。
「貴方達は何者ですかっ?目的は一体・・・・・・・・・」
エリスの問いに、大男は平手で答える。バシッ!と乾いた音を立て、エリスの頬を強かに叩いたのだ。だがエリスの一瞬衝撃で横を向くモノの、スグに正面から殴った相手を睨み付ける。
「いい度胸だな?だが質問するのはコチラの方だ、なんでアヴァロン聖騎士団筆頭のオマエが、こんなド田舎に来ているんだ?」
エリスは鼻で笑いながら答える。
「答える気は有りません!」
再びバシッと音がする。
「ふざける余裕は無いぞ!まともに答えろ」
「アヴァロンの聖騎士を舐めるなっ!喋る積りは無い」
バシッ、バシッ!と音がする。今度は往復ビンタだった。
「イイだろう・・・少し恥ずかしい思いをさせてやる」
言うやエリスの鎧、胸元のプレートを引き剥がした。エリスの服と革のベルトを同時に引き千切りながら・・・・・・・・・
「馬鹿力だけは大したモノね?」
胸元を肌蹴させながら、それでも毅然とした態度でエリスは言った。今度は下半身の鎧を引き千切られる。
「クッ・・・・・・・・」
エリスは羞恥心に頬を染めながら、仮面の間から覗く眼を睨み付ける。
「いい顔になって来たじゃないか?ん・・・何だコレは」
大男はエリスの下肢を剥き出しにして声を上げた。
「プッ、ククククク・・・・・・・・・」
「アハハハハ・・・・・・・・・・」
「クスクス・・・・・・・・・」
一斉に賊達が笑い出した。エリスの下肢を包んでいるのは、下着ではなく貞操帯だったからだ。
「クッ、ウウッ・・・・・・・・」
エリスの表情が屈辱に歪む。
「ハハハハハッ!帝国一の美貌と名高いエリス殿だ。どんな御上品な下着を着けてるかと思いきや、シルクのショーツではなく貞操帯とは思わなかったぞ。お前さんが皇帝フェリシアのネコでペットだってのは本当のようだな?」
賊の笑い声は止まらなかった。悔しさに目を瞑り歯を食い縛るエリス。
「ベッドでフェリシアに甘えて、地位や身分を手に入れたのか?」
だがエリスは目を開けると相手を見据え、挑発するように微笑んだ。
「そんな女一人にココまで振り回されるのでは、貴方達も大した事は無いですね?賊としては統率が取れてるとは思ったけど、所詮その程度なのかしら・・・・・・・・・」
「確かにな・・・俺の48人の部下は兎も角、18体のゴーレムと渡り合えるオマエだ。実力はホンモノだよ」
そう言ってエリスの貞操帯を引き千切る。ミスリル水銀が固体化した貞操帯は、引き千切られた途端に液体に戻った。
「だが・・・こんな拷問に対する抵抗力は有るかな?幾らフェリシアに調教されてると言え、誇り高い騎士のオマエが、賊如きに弄ばれて・・・・・・・・・」
やはり・・・とエリスは思った。だが捕まった以上は仕方ない事だろう。それにエリスには覚悟が有った。
確かに昔の自分なら犯される事に耐えられないだろう。機密を漏らす事は無いだろうが、自分の命を絶つ位の事はしたかも知れなかった。また命を永らえ逃げられたにしても、フェリシアの元に返る事は出来なかった筈だ。
しかし今は違う・・・自分が戻らなければフェリシアの顔が火龍の紋章に焼き爛れるのだ。エンシェントエルフの自分と違い、人間であるフェリシアの顔が火竜に焼かれたら、二目と見られない火傷を負うだろう。
そして、そんな魔法を施してまでも、自分が帰る事を望んでいると、フェリシアは証明してくれたのだ。その期待を裏切る事は、絶対に出来なかった!
エリスの貞操帯の内側は自在に変形し、時には長大な張り型が出現したりする。フェリシアが悪戯で遠隔操作魔法の水晶球を使うのだ。だがエリスが戦いで緊張すると、効果はキャンセルされる様に作られていた。
しかしエリスの括約筋を貫くアナル栓だけは、ミスリル水銀で作られてないので残っていた。
「フッフッフッ・・・オマエがフェリシアにケツの穴を嬲られて、毎晩泣いてるって噂は本当のようだな?」
「クッ!」
エリスは赤面し大男を睨んだ。ほんの少しだけフェリシアを恨むと、生還したら彼女に一言文句を言おうと心に決める。その一方でコノ大男だけは必ず成敗すると誓いながら・・・・・・・・・
「カワイイ顔をして、とんだ変態なんだな?」
アナル栓を弄びながら、大男は嘲笑う。
「ウゥ・・・す、好きでしてる訳じゃないわっ!」
エリスは思わず反論した。
「じゃあ変態はフェリシアなのか?」
「陛下の悪口は許さな・・・ヒッ、ヒャアッ!アッ・・・アウウ・・・・・・・・・」
ズルズルとアナル栓を抜かれ始め、思わず声が漏れてしまった。
「ホ~ラ、さっきの威勢は如何したんだ?」
「随分カワイイ声を上げ始めるじゃないか」
「白銀の聖騎士様はケツの穴が弱点かい?」
「少しは意地を見せて声を抑えたら如何だい?“皇帝フェリシアに握られし白銀の剣”さんよぅ!」
他の賊達もエリスを囲んで囃し立てる。エリスは歯を食い縛って絶えようとした。だがチュポンッと音を立て栓が抜けた時は、声を抑える事が出来なかった。
「はうっ!ハァ・・・ハァ・・・・・・・・・くっ!」
エリスは歯を食い縛り直すと賊達を睨み付けた。すると大男が顎でしゃくり、二人の手下が鞭を持って近付いて来た。
今、エリスの忠誠心が試される事になる。流石に不安になったが、絶対にフェリシアを裏切る事は出来なかった。
「強情な奴ね!悲鳴はおろか呻き声も漏らさない」
「何てしぶとい女なの?」
先に音を上げたのは、鞭打っている筈の賊であった。拷問係は二人掛りでエリスを背後から鞭打った。打撃は背中・双臀からフトモモまで及び、普通なら失神している筈である。
「ハァハァ・・・・・・・・・」
エリスは荒い息を整えながらも、周囲を伺う。部下や騎士見習達に、捕らえられたら体力の温存と逆襲の機会を伺う事を第一に考える様に言って来た。肉体的拷問を受けた時は「せっせと失神した振りをする」様に教えてた筈だった。だが賊のフェリシアを馬鹿にするような口振りに、エリスも少し意地を張り過ぎた様である。
「マダマダ私も未熟ね・・・」
そう思うとエリスは口元に笑みが浮かんだ。それを見た賊達は余裕が有るのか、自分を笑ってるのかと思い一歩退く。
「余裕だな?何時までも強情を張ってられると思うのか」
大男がノッソリと立ち上がった。
「確かに大した奴だよ。ひん剥かれて鞭打たれりゃ、男も女も大抵の奴は音を上げる。オマエは普段から拷問に対する訓練や体罰も受けてるんじゃ無いのか?普通は騎士様になったらやらないだろう?」
確かに他の国ではそうかも知れないが、アヴァロン・・・と言うよりエリスの考えは違った。罪を犯したら罰を受けるのは当然だし、自分を含めて身分の上下は関係が無いと考えていた。騎士団は当然ながら軍隊だから罰に体罰が含まれるのは当然だし、それにエリスは普段から必要以上の体罰をフェリシアから受けている。
だがエンシェントエルフは種族的に、苦痛や屈辱などの外的衝撃に普通の人間より敏感だった。耐えられているのはエリスの精神力の賜物である。
「マダ強情を張る積りか?知ってる事を話せば苦痛から開放されるのだぞ」
「甘く見ないでっ!話す積りも、屈する積りも無い・・・・・・貴方達こそ降伏したら?私一人を人質にしても逃げられないわよ。私を殺すと言っても、陛下は追撃の手を緩めない」
「果たしてそうかな?」
「なら試して見なさい。その代わりに、死ぬほど後悔する事になるから・・・・・・・」
これは事実である。フェリシアの最も皇帝として優れた点は、親族や愛人でも必要なら見捨てられる事だった。最後までフェリシアが守り抜くのは民である。エリスを殺さなくては成らない時には、躊躇無く殺してくれるだろう。
但し、それまでは必死に助けようとしてくれるだろうし、エリスが死んだら心から悲しんでくれる筈だ。エリスにはソレで十分だった。
「その眼は・・・本気、いや本当の様だな」
大男が唸った。だが仮面の下で唇がイヤらしく歪む。
「じゃあ拷問の仕方を代えて見るとしよう。覚悟しろ女として生まれた事を後悔させてやる」
エリスは心の中で涙を零す。恐らく次の拷問の内容は・・・・・・犯される事は間違い無いだろうからだ。
エリスは幸いな事に、今まで敵に囚われた事は一度も無かった。女が・・・それもエリスの様に美しい身体をもつ若い女が敵の手に落ちたら、自ずと運命は決まるようなモノだから、運が良かったと言えるだろう。
したがってエリスはフェリシア以外の人間に身体を許した事は無い。少し前に罰としてフェリシアに犯されながら、部下達に尻穴を中心に嬲られた位である。
「さて・・・オマエの様に美しい女を弄べるとは役得なんだが、それでは拷問としては面白味が無い。ここは人間以外の代物に犯させてやろう!」
考えただけでエリスは鳥肌が立つ、獣にでも相手をさせようと言うのだろうか?だが次の瞬間エリスの足元が抜け、身体が下に吸い込まれていった。そして肩が抜けるかと思うような衝撃と共に、エリスの身体は宙吊りになった。
「ウッ、グッ・・・・・・・・」
宙吊りになった時の激痛に耐えるエリス、関節を脱臼する事は免れた様であるが、手首に鋭い痛みが走る。すると上から声が響いた。
「ショーの始まりだ!エリスよ、貴様は何処まで耐えられる?」
採光用の窓が次々開き、エリスが吊るされた空間を照らし出す。
「こ・・・これはっ!?」
最初エリスは目の前に有る物が何か判らなかった。ここまで巨大な代物を見た事が無かったからだ。洞窟の壁と思い、次は洞窟内の岩肌が柱状に成っているだけだと見えたのだ。だがユックリとゆするように動き出し、根元から触手が立ち上がるのを目撃し、ようやく正体に気がついた。
それは高さが20メートル以上も有る・・・巨大なマンイーターだったのだ!
「イ・・・イヤァ~~~~~ッ!」
悲鳴を我慢出来なかったエリスを、一体誰が笑えると言うのだろうか・・・・・・・・・その巨大さはエリスの学んだ知識の中にも、帝国図書館の膨大な蔵書の中にも見当たらなかった。大体マンイーターとは精々、幹の高さが2メートル幹の直径は50センチ位にしか成らない筈だった。繁殖は株の分裂によって行われ、数年に一度行われるだけである。
その得意な生態から一時、マンイーターはアヴァロンから駆逐され掛けた。しかしフェリシアが考案した「下水の浄化システム」に最適だった為、今では保護をされている。この大きさのマンイーターなら町一つ分の下水道でも、十分に浄化出来る能力を持っているのだ。
「ア・・・アアッ!」
エリスは周囲を見回し、何とか逃げる方法が無いかと考えた。だが、そんなモノが有る筈がない。
「さあエリス、最後のチャンスだ!この港に来た目的は何だ?言えばスグ引き上げてやるぞ」
エリスは自分が落とされた落とし穴を見上げ、大きな声で言った。
「例え何をされ様と、貴方達に屈する訳には行かない!」
大男は部下に合図した。ガラガラと滑車が回る音がして、エリスの体が下がって行く。
エリスはマンイーターの根元を見た・・・捕食用の触手は、マンイーターの根の内の一部である。そこから触手を伸ばし、動物を捕らえ、肥料とする排泄物を強制的に吸い取るのだ。
「あ・・・ああっ・・・・・・・・・」
エリスは覚悟を決めていた筈だった。だがマンイーターによる拷問は、エリスの最も苦手である“精神的に責める拷問法”である。実際エリス自身にも耐え切れる自信は無い。
“ググッ・・・ズルズルズル・・・・・・・・・”
マンイーターの根元から捕食用の触手が鎌首を持ち上げた。だが・・・それを見たエリスは、自分の恐怖に耐えられなかった。
「そんな・・・嘘でしょう?イ・・・イヤ・・・イヤァァァ~~~~~ッ!」
巨岩の様に巨大なマンイーターの触手は、エリスの胴体より、数周り太かったのだ!
マンイーターの生態は捕らえた動物の排泄器官に触手を差込み、浣腸効果の強い樹液を獲物に注入し、排泄物を溶解してから吸引する。当然ながら人喰いとは名ばかりで捕食するのは人間とは限らないから、どの獲物にも対応出来るように様々な太さの触手を持っていて、太さも自在に伸縮する。そして捕らえた獲物の大きさに合わせ、触手を出して来るのだ。
今エリスに迫っている触手は、どう見ても直径が30cmは有る。こんな物が肛門に入って来たら・・・幾等エリスでも下半身が真っ二つに裂けて仕舞うだろう。エリスのウエストより太いのだから当然だった。
幾等伸縮性に富んでいるとは言え、元の太さが30cmも有るのだ。縮んだとしてもエリスのアヌス、イイヤ胴体だって耐えられる筈が無い。
“ガチガチガチ・・・・・・・・・”
エリスは自分の奥歯が音を立てているのをハッキリと聞いた。
「殺される・・・しかも身体を二つに裂かれると言う無残な方法で!」
エリスは自分の弱い部分を自覚する。あまりに強過ぎた為、今までエリスは本当に死に直面した事が無かったのだ。今の自分は死に恐怖して、惨めに打ち震えていた。
「どうだ怖いのだろう・・・考えは変らないか?」
敵の首領が上で嘲笑う。
「確かに私は恐怖している。こんなに死の恐怖に弱いとは・・・我ながら情けない。でもっ!」
エリスは上を向き、大声で叫ぶ!
「私は国を・・・イイエ、陛下を裏切らない!裏切れる筈が無いっ」
そして巨大マンイーターを、正面から睨み付ける。
「好きな様にするが良いっ!しかし私は絶対に屈しないわ。絶対に・・・・・・・・・」
「クッ!」
上で大男が歯軋りをする。
触手はエリスの眼前まで迫った。この触手に自分の体が何処まで耐えられるか分からない。しかしエリスは諦める気は毛頭無かった。
「いい覚悟だ・・・そんなオマエに御褒美をやろう。貴重な情報だぞ」
エリスは怪訝な顔をして、上を見上げた。
「触手の先端を見ろ。普通のマンイーターと違って二重構造になってるだろう?太い触手の中に細い触手が見える筈だ。ここまで巨大に育ったマンイーターだけに見られる特徴だ」
確かに30cm触手の内側に、十分の一位の太さの触手がある。
「オマエのケツに入り込む部分は、その細い部分だけだ。オマエは身体を引き裂かれて殺される心配などしなくても良かったんだよ」
自分の心内を見透かされ、悔しくて歯噛みするエリス。だが朗報である事は確かだった。エリスは心の中で胸を撫で下ろす。
「だが・・・殺された方がマシだったかも知れないな?巨大マンイーターが獲物を如何捕食するか知ってるか?」
知ってる筈が無い。だからエリスは恐怖したのだから・・・・・・・・
「その太い触手でオマエのケツ全体を包んで・・・細い触手からエンドレスで樹液を浣腸され続けるんだ!その辛さは半端じゃあないぞ。俺に逆らった部下に罰として味あわせたら、ものの数十秒で許してくれと泣き叫んだ」
「最低ねっ」
「おや?オマエの飼い主だって似たような事をしてると聞いたぞ」
「くっ!」
エリスは言葉に詰まった。陛下と貴方は違うと言いたいのに、言葉が上手く浮かばないのだ。
「何処かは上手く言えないけど、貴方と陛下は違うわっ」
仕方なく思った通りの事を口にする。
「クックックッ、まあ良い。細い触手から連続して樹液を注入され、溢れた液体を外側で吸い取られる。絶え間なく続く浣腸責めにオマエは何処まで耐えられる?ホラッ、マンイーターが来るぞ」
「エッ?きゃあっ!」
太い触手はエリスの胴体を一周してから、エリスの臀部に張り付いた。意外と細く纏まると、肛門を中心にエリスの双臀の半分を包み込む。
「ヒッ、いやっ・・・気持ち悪い」
エリスは思わず本音を漏らした。触手は結構強い吸引力でエリスの尻に吸い付いている。
「この・・・放しなさいっ!」
エリスは双臀を左右に降って、振り解こうとする。だがヌメッとした感触が括約筋を押し広げると、それも出来なくなった。
「はうっ、う・・・あ・・・・・・」
ヌメヌメと巨大なナメクジが潜り込むような、最大限に気色悪い感触だった。この内側の触手だけで、普通のマンイーターより太いかも知れない。
「あっ、ああっ・・・苦っ・・・・・・」
段々と括約筋が押し広げられて行く。そしてエリスが裂けると思った瞬間、触手は停止して一周り縮んだ。エリスの肛門の限界を確認してたらしい。
「ハア・・・ハア・・・痛ぅ・・・・・・・・・」
ヒリ付く肛門の痛み、しかし真の地獄は今から始まるのだった。一瞬触手が膨らみ、温度の高い液体が直腸に流れ込む。樹液の浣腸が始まったのだ。
「ウッ・・・エッ?!こ・・・これはっ、そんな!ヒッ、ヒギィ・・・ヒァァァ~~~ッ!」
浣腸が始まった途端エリスは狼狽え、そして悲鳴を上げた。この樹液の浣腸は、今まで味わって来た、どのマンイーターよりも辛い浣腸液だったからである。まるで酸でも浣腸されているような、激しい痛みが走っているのだ。
腸内が燃え上がるような熱と苦痛を伴い、エリスは反射的に息んで排泄する。括約筋を貫く内側の触手と肛門の間から、凄まじい勢いで樹液を排泄し、その外周の触手が吸入する。
「ひぎっ、ひぎぃ・・・うっ!ぐっ・・・ウワァァァァァ・・・・・・・」
だが排泄する浣腸液より、流れ込んで来る液量の方が圧倒的に多かった。
「ヒッ、ヒィ・・・熱っ・・・ウッ!キャアァァァ~~~ッ」
排泄する液体が擦れ、エリスは肛門に燃えるような熱さを感じた。フェリシアはマンイーターの樹液から作った“懲罰用浣腸液”をエリスに何度も使っていた。それより遥かに今の浣腸の方が辛かった。
「ヤメ・・・もう止めて、お願い・・・お願いだから」
エリスは思わず口走る。
「話す気に成ったか?」
「言えない・・・それだけは言えない」
「なら言えるようになるまで、悶え苦しむ事だ」
「ううっ・・・アッ、うあぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・」
やがて下腹が少し膨らむと、オシリの穴を塞ぐ触手が少し縮んだ。エリスの排泄量が飛躍的に増える。しかし流れ込む量は減らず、反って勢いを増し増えて行った。更に・・・・・・・・・
「な・・・何っ?」
エリスは腸に違和感を感じる。内側の細い触手が伸びて、エリスの体内を逆登って来るのだ。
「うっ、うぎゃぁぁぁぁぁ~~~っ!」
エリスの腸内を太いホースが、樹液を浣腸しながら進んで来た。ズンズンと大腸を回転しながら突き進む。
「ううっ・・・死ぬ、死んでしまう」
エリスの視界が暗くなった。
数時間後、マンイーターが樹液を全て吸い上げ拷問が終了した。だがエリスには永遠に思えた時間だったろう。
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・・・・・・・」
鎖を解かれ地面に横たわるエリス。しかしオシリの穴には極太の触手が吸い付いたままだった。エリスは這い進み、何とか触手を抜こうとするが、触手は獲物であるエリスを放す気は無いようだ。
「良い様だ」
大男の首領が言った。エリスは消耗を隠せないが、それでも敵を睨み付ける。
「残念な御報せだ。オマエを捜索してたらしいアヴァロンの軍が、聖都に戻り始めた。見捨てられたな?」
その可能性は有った。フェリシアは愛人が相手でも特別扱いはしない。アンジェラと合流出来たとは思えないが、必要なら聖都に引き返すだろう。それは確かに言われた通り“見捨てられた”事になる。
「フェリシアにとってオマエの値打ちは、この程度だったんだ」
確かに寂しさは覚える。しかし無理に捜索を続行するのはフェリシアの為にならない。この連中の背後関係も判らないのだ。一度聖都に戻る判断は正しいかも知れない。
「また捜索に来ると信じてるのか?甘いな・・・大体これだけ辱めを受けながら、自ら命を絶つ事も出来ない。貴様も意外と大した騎士では・・・・・・・・ウゴッ!」
次の瞬間、周りの一同が目を疑った。エリスが即行で立ち上がり、首領の鳩尾に拳を叩き込んだのだ。
エリスの化け物振りは、散々見せ付けられた。しかし実はエリスは気を失ってる間に、普通の人間なら死に兼ねない量の痺れ薬を与えられていたのだ。しかも気を失って飲ませる事が出来ないから、吸収の良い直腸から浣腸という形で・・・・・・これで立ち上がれる筈が無い。
「馬鹿な・・・グオッ!」
今度は首領の顔を蹴り上げるエリス、恐る恐る取り囲む賊達は手を出す事も出来なかった。
「誤解をしている様だから言って置く」
エリスは賊の前に立ち、毅然と言い放った。着衣の胸と股間を破られて肌蹴させ、しかもオシリからマンイーターの触手が垂れ下がる。そんな無様と言える格好でである。
しかし・・・それでもエリスは美しく、そして凛々しかった。こんな惨めな姿なのに、今のエリスは無手でも立ち向かってきそうな気迫、そして気品すらあった。
「無闇に自分の命を絶つ者を、アヴァロンで最高の騎士とは言わない!そして何より私の身体は、すでに私の物では無い!この身体はフェリシア皇帝陛下の所有物なのですっ」
「ぐはっ!」
更に腹部を蹴り上げてから、エリスは続ける。
「この命、そして身体・・・髪の毛一本までも陛下の物、それを私如きが勝手に・・・そして気安く捨てられる筈が無い!この身体の末を決めるのは陛下のみなのです」
「ど・・・如何かな?ここまで俺達に弄ばれ、汚された身体だ。フェリシアは“もう要らない”と言うかも知れないぞ」
エリスは悲しげに、そして力強く答える。
「その時は陛下に捨てられるだけの事、それからでも・・・何時でも命など絶つ事が出来ます。しかし私は陛下に約束したわ・・・汚辱に塗れ、泥水を啜り、地べたを這いずり回っても、必ず陛下の元に戻ると!だから、そうする・・・・・・・・・」
エリスは鎧の腰の後ろに隠してあったダガーを抜いた。
「これ以上、貴方達の好きにはさせない!この身体はフェリシア皇帝陛下が宝物とまで言って下さった物っ!貴方方ごときに弄ばせる物ではない。そして私は・・・絶対に陛下の元に戻るっ!」
“パチパチパチパチ・・・・・・・・・・・・・・・・”
エリスは何処からか拍手の音が聞こえたように感じた。空耳?イヤ確かに聞こえる。
「よく言ったわエリスッ、それでこそ私の宝よっ!私は値段や他人の評価では判断しない、自分で認めた一流のモノのみ所有する。エリスは私の所有物である資格を十二分に持ってるワ!」
エリスは我が耳を疑った。そして視覚も・・・洞窟の入り口から、堂々と歩み寄って来るのはフェリシアだったからだ。
「何だテメェは?」
フェリシアの両側から賊が挟み込む。
「ヤメロ、そいつは・・・・」
首領が言い終わる前に、賊はフェリシアに殴り飛ばされる。フェリシアは左右に腕を突き出しただけの様に見えたが、二人の賊は数m吹っ飛んで気を失った。
更にフェリシアの背後には、鎧姿のローザと忍び装束のレイが続く。賊達もフェリシアの正体に気付いた様だ。フェリシアの歩みに併せて、賊の集団が左右に分かれる。
「陛下・・・何故このような場所に?」
「黙って為さい」
優しく言ってフェリシアは、自分の額をエリスの額に押し付け呪文を唱えた。
「ウッ!」
フェリシアは一瞬ふら付き、自分の尻を抑えて蹲る。そして立ち上がるとエリスを抱き締め言った。
「こんな・・・こんな酷い目に合いながら、私に為に命を絶たずに頑張ってくれたのね?アリガトウ・・・・・・・・・」
魔法でエリスの体験した事を、自分でも読み取り感じたのだ。痛みや恥辱すらも含めて!
その時マンイーターの触手がフェリシアの背後に回り込む。近付き過ぎたフェリシア達を捕食する積りなのだ。だがフェリシアが睨み付けると動きが止まる。
「私にまでチョッカイ出す気なの?イイ度胸じゃない、私の大事な人に、こんな眼に合わせながら・・・焼き殺されたいみたいね!」
フェリシアの掌中に火の玉が揺らめく。すると触手が縮み上がって震えだした。何と言う事だろう・・・フェリシアの気迫は植物にすら恐怖を与えているのだ。するとフェリシアは古代語を交えながら、なんとマンイーターと会話を始める。
「そう・・・こんな所で閉じ込められて獲物が来なくて飢えてたのね?可哀想に・・・本来はエリスをコンナ眼に会わせた貴方は許せないけど、そう言う事なら仕方ない。格別の慈悲を持って許しましょう。後でチャンとした場所へ移植して上げる。だから・・・もう少し我慢しなさい。そしてエリスを離すのです」
シュルシュルと触手が縮み、エリスのアヌスからズルズルと音を立て抜き取られていった。
「あっ、ああっ!ひぁぁぁぁぁ・・・・・・」
エリスは悲鳴を上げながらフェリシアに抱き付いた。フェリシアはエリスを抱き上げると、そのまま賊に向かった。その二人を守るように、マンイーターが枝葉を広げ、二人を庇う。
「イイ子ね」
フェリシアは優しくマンイーターに言うと、賊を睨んだ。その眼は賊達が腰を抜かしそうになるほど怒りが篭っている。
「よくも・・・よくもエリスをコンナ酷い眼にっ!ここまでは私だってやらないよ!!」
フェリシアの身体から赤いオーラが立ち上る。怒りのオーラだった。
「軍を引かせて正解だったわ。今の私は自分を抑えられる自信が無い・・・自分の軍隊でも巻き添えにしてしまうモノ。さあ覚悟なさい。私は受けた怨みと親切は、必ず本人に返す事にしているの」
「ま・・・待!」
首領が言いかけた。だがフェリシアは止まらない。
「倍にしてねっ!!」
無声詠唱、言葉に出さずに魔法を発動させる呪文を唱える秘法だった!すでに発動した魔法は洞窟内で竜巻を起こし、全ての敵を飲み込んだ。勿論ローザとレイは、ちゃっかり外に逃げていた。
「ま・・・待てっ!」
「誰が待つモノですかっ!」
賊が一瞬で四方八方に飛ばされた。天井に壁に物にぶつかり、次々と戦闘不能になって行く。一人だけ耐え忍んだ者が居た。大男の首領である。
しかし気が付くとフェリシアがエリスを抱いた侭、目の前に仁王立ちで睨んでいた。
「待てフェリシアッ、俺だ・・・・・・」
「最初から分かってるわよっ」
飛び込んで膝蹴りを鳩尾に叩き込む。一瞬で大男は失神した。
「殺されなかっただけ、運が良かったと思いなさい」
魔法が収まると彼方此方から泣き声や呻き声が聞こえる。骨折などで声を上げる賊の声だった。すぐにローザが部下を率いて、賊を捕縛し手当てをする。
フェリシアはエリスを抱いたまま、首領の前に歩み寄った。そして仮面を蹴り上げ外す。仮面の下には・・・意外と童顔のカワイイ顔があった。エリスは思わず呟いた。
「お・・・女だったのですか?」
フェリシアも呟く。
「やっぱり貴女だったのね?」
エリスは驚きを隠せない。
「陛下はコノ者を御存知なのですか?」
フェリシアは済まなそうに呟いた。
「紹介するワ、エリス・・・この人がアンジェラ、私のお姉さまのアンジェラよ!」
全員が耳を疑った。
アンジェラの護送をローザ達に任せ、フェリシアは井戸でエリスの身体を洗い手当てをした。
特に鎖に繋がれ吊るされていた手首の傷は痛々しく、右手首は骨まで折れていた。
治るまでエリスでも一週間、全ての傷が癒えるまで10日は掛かるだろう。
エリスの傷を気遣い、フェリシアの馬車で聖都に向かう。
しかし馬車の中では半ば言い争いが始まっていた。
「御待ち下さいっ!もし裁判になったら、万一の時にはアンジェラ様を死刑にしなくては成りません!裁判にしては成りません・・・ここは内密に処分を」
「お黙りなさいっ!今回は散々酷い目にあったし、加害者が私の肉親だから許すけど、今の発言は地下ドームで鞭打ち+マンイーターでの懲罰物の失言よっ」
万民に公平な政治を目指すフェリシアに、エリスの発言は許せない。
その怒りにエリスは怯んでしまった。
「私の姉と言え今回の事件は、下手をしたら反乱罪に当ります。私の軍と知って襲ったのだから」
「でも何か理由が・・・・・・」
尚も食い下がるエリス!
「なら釈明は裁判でさせるのよ!誰でも罪を犯せば捌かれる、それに身分や出身・金銭で特例を作る事は出来ません。エリスだって判ってるでしょう?」
「しかし・・・・・・・・・」
フェリシアはエリスを引き倒すと、その尻に一発平手を打ち込んだ。
「これ以上の発言は許しません。黙って静かに眠りなさいっ!」
エリスはフェリシアの眼に涙が滲んでいるのを見た。フェリシアはアンジェラが内乱を企んでいたなら、殺す積りなのだ!
フェリシアは宮殿に帰ると、エリスを寝室のある塔に閉じ込めた。
"療養"兼"謹慎"の処分である。
だがフェリシアは言葉ほど怒ってない。
エリスの身体を心配して休ませたいのである。
それに自分が処罰される事を覚悟の上で、エリスは勝手な事をしかねない。
だからエリスを閉じ込めたのだ。
そしてフェリシアは意識のある山賊を尋問するため、医療刑務所に向かった。
一人残されたエリスは考える。
"本当に仲の良かった姉妹だったと聞く。
このまま裁判が行われ、アンジェラ様が内乱罪で死刑に成ったら・・・如何に陛下は悲しむだろうか?"
外出を禁じられ閉じ込められたエリスは思案を巡らした。
"アンジェラ様が何故あんな真似をされたのかは判らないが、本当に内乱など企んでたのだろうか?
お義父様や私の眼は曇っていたの?"
お義父様とは第一騎士団長フォレスの事である。
エリスの祖父の弟子だった人物で、フェリシアがエリスを聖都に連れて来た時、幼女にしてくれたのだ。
"陛下は・・・アンジェラ様が皇帝の座を狙っていたなら、間違いなく死刑にするわ!そして海より深く悲しむ筈、自分の肉親を殺して心を痛めない方では無い"
エリスは何とか騒動を収められないか思案する。
だが良い考えが浮かばない。
"アンジェラ様を逃がすか?イエ、陛下を裏切る真似は出来ないわ!
そんな事をしたら、私も当然死刑にしなければ成らないし、そうしたら陛下は悲しまれる・・・・・・・・・"
"いっそアンジェラ様と私も逃げる?
出来る筈が無いじゃないっ!何を考えてるのエリス・・・
そんな事をしたら火竜の紋章が暴れるじゃない"
良い考えは一向に浮かばない。
そうしてる内に夜はドンドン深けて来る。
フェリシアの手でアンジェラを殺される事を回避して、尚且つ自分が死刑に成る事と、フェリシアの元を去る事を、同時に回避しなくては成らなかった。
"唯一の方法は・・・しかしこの方法を使ったら、私は騎士を除名される!"
頭を抱え思い悩み・・・だがエリスは覚悟を決めた。
例え騎士から除名され、アヴァロンから追放され様と、直接フェリシアに姉を殺す命令を下させなくて済む道を選んだのだ。
「誰かっ!誰か居ないのですか」
エリスを見張っていたらしい、数人の侍従の少女が入って来た。
エリスを逃がさぬように命じられていたのだろう。
「着替えを用意して下さい。陛下の言い付けを破る事に成りますが、軍事刑務所に赴きアンジェラ殿下の真意を伺います。そして本当に内乱を企んでいた時は、その場で私が成敗します」
侍従達は怯え後退った。
「陛下に姉殺しをさせる訳には行きません。責任は全て私が取りますから・・・・・・・・・んっ!?」
行き成りエリスは剣を掴むと、バルコニーに飛び出した!
何者かの気配を感じたのだ。
「何者だっ!!」
「ヤ・・・ヤァ、コンバンワ♪」
其処には壁に絡んだ蔦を使い、壁をよじ登るアンジェラの姿が有った。
「全く何を考えてるのですか!貴方は今、内乱罪で収監されているのですよ」
エリスは侍従達に固く口止めして、外へ追い出した。
フェリシアの寝室に居るのは、エリスとアンジェラの二人である。
「そう言うオマエだってイイ度胸だ。殺されたかも知れない相手と二人っきりで、しかも脱走者を相手に茶なんか出してる」
エリスが侍従に用意させた茶を啜り平然と答える。
「陛下の姉上に無礼な応対は出来ないでしょう!その様子では、命が惜しくて逃げ出した訳でもない様だし・・・・・・一体何しに来たのですか?」
するとアンジェラは平然と答える。
「オマエに殺されに来たんだよ」
「えっ?」
エリスは耳を疑った。
「オマエには散々酷い事をした。許される筈が無い事は判っている。だからケジメって奴を付けに来たのさ。その代わり部下は勘弁してやってくれないか?アヴァロンで拾った山賊達だが、根はイイ奴等なんだ。今回は俺の命令に従っただけで・・・・・・・・・」
「そう思うなら、なんでこんな馬鹿な事をしでかしたのですかっ!」
エリスはアンジェラに剣を突き付け言った。
返答次第によっては殺さなくては成らない。
「コイツは悪戯の積りだったのさ。オマエを生け捕りにして"こんなんで軍人が勤まるのかっ!俺が提督になったからには、鍛え上げてやるから覚悟しろっ!"とでも言ってさ」
「そんな事でアソコまでする必要は無いでしょうっ!」
エリスは怒鳴った。
悪戯で済まされる事では無い。
「だ・・・だから最初はだよっ!そしたらオマエはゴーレムを相手に大活躍だ・・・あのゴーレムは軍事用に作られた戦略兵器なんだぞ?攻城兵器や都市制圧用の戦闘兵器なんだよ」
エリスは言葉に詰まった。
「人間が一人で立ち向かえる代物じゃあない。なのにオマエは枯れ木を切り倒すみたいに・・・・・・・・・俺はオマエが恐ろしくなったんだよ!」
エリスはアンジェラを見詰めた。
嘘は言ってない様である。
本当に怯えているのか微かに震えていた。
「アヴァロンとアルカディア二つの大陸で7人しか居ないドラゴンスレイヤー!中でもアヴァロンの聖騎士エリスとアルカディアの竜戦騎ファルスグリードは別格だ・・・そんな話は何度も聞いて居たさ。でもオマエには直接会った事は無いし、ファルス皇子は年がら年中旅をしてる。始めて見るオマエは、私にとって地獄から這い上がった悪魔みたいに見えたのさ」
エリスは思わず苦笑した。
幾等何でも悪魔は酷い。
「こんなバケモノが居たらアヴァロンは・・・いやフェリシアは滅ぼされるかも知れない。事実エリス将軍の名声ときたらアルカディアでも聞かない日は無かったさ。だからオマエが本気になったらフェリシアなんか亡き者にして、アヴァロンを乗っ取る事なんて楽に出来る。本当にフェリシアの忠実なのか、俺は確かめずには居られなかったんだよ」
シュンと大人しくなるアンジェラ、やはり養父と自分の眼は間違って無かったのだ。
そこでエリスは最後の疑問を投げかけた。
「しかし・・・それにしても解せません。それを考慮した上でも、やり過ぎたなどと言うレベルじゃあ無かったわ?私は貴女から受けた拷問に、もっと怒りか何かの感情が篭ってたように思います。私は貴女に有った事すら無い筈ですが?」
エリスが騎士になって暫くしてから、アンジェラは父親である先代皇帝に、フェリシアを皇帝にする様に進言する。
そして人知れず国から消えた・・・エリスはその間、一度もアンジェラに有ってなかったのだ。
アンジェラは頬を赤く染め、チョッと罰の悪そうな顔をした。そしてニカッと笑うとエリスに答える。
「嫉妬・・・かな?」
「嫉妬ですって?」
エリスは思わず聞き返す。
「俺が言うのも何だけど、オマエが現れるまでフェリシアは"お姉ちゃんっ子"だったんだ。何をするにも"お姉さま、お姉さま"って言って後を付いて来る。本当にカワイイ妹だったんだ。だのにオマエを聖都に連れて来た途端、何をするにも"エリス、エリス"ってオマエの後に付いて行く。そんなの毎日見せられて・・・事実あの頃アイツの話題にオマエの名前が挙がらない事は一日も無かったんだ。俺はオマエに嫉妬してたんだろうな・・・・・・・・・・・・・」
エリスはアンジェラに対する嫌悪感が引いて行くのを感じていた。
やり方は無茶苦茶だが、その考えは理解出来る。
と言うより無茶苦茶な事もフェリシアの姉だと思えば納得するのも難しく無い。
「分りました・・・・・・」
エリスはスクッと立ち上がった。
その手には愛用のナイツサーベルが握られ、アンジェラは"終に切られるんだな"と姿勢を正し覚悟を決める。
だがエリスは思い切り身体を翻すと、全体重を掛けてアンジェラの頬に左ストレートを見舞いした。
"ドゴッ!"「ウオッ!!」
アンジェラは一回転をして壁にぶつかった。
骨折していないのが、利き腕の左だったのが災難だった。
だがエリスも指の骨が折れて仕舞う。
「こ・・・これで痛み分けと致しましょう」
「エッ?」
エリスの言葉の意味が理解出来なかった。
「最初は陛下の為を思っての事、許し難い行いですけど今回は大目に見ます。何より貴女を殺せば、陛下は悲しまれます。陛下の笑顔が曇るのなんて、私は見たくは有りません」
「エリス・・・オマエ・・・・・・」
エリスは拳を撫でながら、アンジェラに言った。
「事は既に表ざたに成ってますが、私も貴女を弁護します。無罪放免・・・と言う訳には行かないでしょうが、きっと陛下なら分って下さいます。格段の慈悲をもって寛大な処置を下さる筈です。私に償いたいと思うなら、その後アヴァロン軍で陛下に忠誠を示す事で償って下さい。陛下に忠誠を尽くされる事が、私にとって何よりの償いです」
「ウウッ、エリス~~~ゥ!」
アンジェラが顔を涙でクシャクシャにしてエリスに飛びついた。
「俺が間違っていた。オマエは・・・いいやエリスは、なんてイイ奴なんだっ!オマエはアヴァロンに、いやフェリシアに絶対必要な人間だよ!オマエがフェリシアを滅ぼす事は無い。フェリシアの益に成る事は有っても!」
余りの激しさにエリスは一歩退いた。
「任してくれっ!エリスの、否フェリシアの敵は全て俺が切り捨ててやる。このアヴァロンに仇名す者は、コボルトの一匹だって入れないぜ!」
エリスの顔では笑顔を演じながら、内心少々困惑する。
"こ・・・この人こんな調子で大丈夫かしら?陛下の言われた通り、根っからの筋肉系の武人だわ。本当に精鋭揃いのアルカディア軍で将軍をしてたのかなァ?"
エリスは大いに心配になった。
そんなエリスにお構いなく、アンジェラは上機嫌で捲し立てた。
「この俺が味方に成りゃ千人力、イイヤ万人力よっ!任せろアルカディアじゃあ常に海賊退治の先陣を切ってた特攻隊長で・・・・・そうだ!」
ゴソゴソとポケットからピルケースを取り出した。
中には膏薬がベッタリと張り付いている。
「アルカディア近海物の黒鮫の油だ。どんな傷だってスグに治るぞ!エリスッ、ケツを出してみろ」
「エッ!」
エリスは困惑した。
「幾等エンシェントエルフと言ったって散々鞭打たれた上に、ぶっといマンイーターの触手をケツ穴にブチ込まれたら、怪我してるだろ?出せよ、コイツを塗りゃ・・・・・・・・・」
「結構ですっ!アヴァロンにも良い薬が・・・イイエ自分でやりますからっ!」
たじろぎ逃げようとするエリス、だがアンジェラの大きな手はガッシリとエリスの腕を掴んだ。
ベッドの上に押し倒し、エリスの夜着であるワンピースをたくし上げる。
鞭打ちの痕が痛い為、下着の類は着けてない。
エリスの傷付いた双臀が外気に晒される。
「こんなに成っちまって・・・悪かったよ」
「そう思うなら止めて下さいっ!いい加減にしないと怒りますよっ!」
だが次の瞬間、温かい感触が肛門を襲った。
"ヌメッ、ヌルッ・・・ン"
「イッ、キャアァァァ~~~ッ!?」
振り返るとアンジェラがエリスの双臀に顔を埋めて、肛穴を舌で舐め上げている。
「な・・・何をするのですかっ!」
「フッフッフッ・・・自慢じゃあ無いが、アルカディアの女カサノヴァと言われた俺様さ!男でも女でも俺の舌で泣かなかった奴は居ない。眼に止まった獲物は全て落として来たんだ」
そう言うと膏薬を指に取り、エリスのアヌスへ指二本使い捻り込む。
「アッ、アッ、そんな・・・何故・・・ヒッ、ヤメテッ!ヤメテ下さいっ!!」
「そうは行かないっ」
更に指を巧みに使い、エリスの性感を弄ぶ。
"グチャッ・・・グチョッ・・・ミチャッ・・・グチャッ・・・グチャッ・・・・・・・・・"
「ヒッ、ヒィッ!イヤッ、イヤァ~~~ッ!」
エリスの泣き声が寝室に響いた。
エリスは侍従達に、寝室ではなく塔からの退出を求めた事を後悔した。
「何故っ、何故この様な事をっ!いい加減に止めて下さい。本気で怒りますよ」
だがアンジェラは思いも拠らなかった事を口走った。
「俺は帝位になんか興味は無い・・・でもエリスには本気で惚れた!オマエをフェリシアから奪ってやる!フェリシアは公言してるんだろ?"エリスを自分から奪えるならやって見なさい"と」
「い・・・意味が違います。ヤメテ・・・ヤメ、イヤァ~~~ッ!」
エリスはジタバタ暴れた。
だがアンジェラを振り解く事は出来なかった。
「流石のオマエも体力の限界だな?片腕が骨折し、もう片方の手も今俺を殴って指を折っただろう?フッフッフッ・・・逃がさないぞエリスッ!」
再び舌による攻勢が始まった。
"ヌチョッ!ベチョッ!クプッ!ヌヌヌ・・・・・・・・・"
「ヒヤッ!イヤッ、イヤァ~~~ッ!誰か・・・誰かァ~~~っ!」
流石に叫ぶエリス!
しかしこの塔には、普段からエリスとフェリシアの睦み事を隠す為、防音効果が高いのだ。
「フフッ、如何だエリス、俺の舌使いは?俺の舌にかかれば、オマエのようなプライドの高い女から、何も知らない小娘、たとえ経験を積んだ熟女だって皆落ちて自分から舐めて下さいってケツを出し、カワイイ声でよがり泣く様になるんだ。オマエも時間の問題さ」
「陛下の方がよっぽど上手ですっ!」
とんでもない事を思わず口走るエリス、もっとも本人も何を言ってしまったのか気付く余裕が無い。
「そうかい・・・そう言われたら余計に腕が鳴るぜっ!」
"ブチュッ!チュバッ・・・ピチャ・・・ペチャ・・・・・・・・・」
「ヒッ!イヤッ、イヤァァァ・・・・・・・・・・」
双臀に顔を埋めて、責めを再開するアンジェラ!
エリスは必死に逃げようともがく!
しかし流石に自分から自慢するだけ有って、アンジェラの舌技は相当な物だった。
エリスの肛穴に甘い、禁断の疼きが広がり、エリスの体力を奪っていった。
「イヤだっ!ヤメなさい、ヤメテェ~~~ッ!!」
黒い快楽がドンドン広がって来る。
そもそもエリスはアヌスを責められるのは大嫌いだったのだ。
快楽は確かに感じる、むしろ前を責められるより感じているのかも知れない。
しかし本来は排泄器官である。
フェリシアに責められるのは愛する人が求めるから、必死で我慢して居るのだ。
しかもレイプでは嫌悪感が先に立つ。
「ヤダッ!ヤダァ~~~ッ」
等々エリスは本気で泣き出してしまう。
アンジェラの腕力は確かにエリスより強い、しかし五体満足ならエリスは決して負けない自信が有った。
なのに今は子供のように、言い様にあしらわれている事が悔しく悲しかったのだ。
勿論相手の事を考えなければ、もっと無茶苦茶に暴れられる。
しかしエリスにはフェリシアの姉であるアンジェラの「顔を足蹴にする事」も「その身体に爪を立てる事」も出来なかったのだ!
「陛下っ、陛下ぁ~~~っ!」
エリスは聞こえる筈も無い恋人を呼ぶ!
「助けてっ!助けて下さい・・・陛下っ、助けてえ~~~っ!」
その時、奇跡が起こった。
"ガッシャァ~~~ンッ!"
盛大に何かが割れる音がした。
続いて冷たい液体が、自分の尻にポタポタと滴ってくる。
「・・・・・?」
おそるおそるエリスは振り返る。するとアンジェラが頭から血を流して硬直を・・・イヤ血にしては色が薄い。
すると大きなアンジェラの身体が、スローモーションのように落ちて行き、エリスの尻に顔を埋めて気を失う。
そしてアンジェラの背後から、愛しいフェリシアの顔が見えた!
その手には大きな取っ手が握られている。
取っ手の先に有った筈の"ワインのフラゴン"でアンジェラの後頭部を打ん殴ったのだ!
「陛下ァ~~~ッ!」
まるで白馬の騎士に助けられた姫のように、エリスは泣きながらフェリシアに駆け寄った。
フェリシアも両手を広げて恋人を抱き締めると、優しくエリスの頭を撫でる。
そんなフェリシアも顔を紅潮させて、肩で息を切っていた。
「ゴメンね!お姉さまが居なくなったと聞いて、近くまで来てたんだけど・・・魔法の水晶球で二人の様子を見てたら、お姉さまが本心を語り始めたので暫く見てたのよ。まさか再びコンナ真似するなんて思わなくって、事が始まったらスグに走って来たんだけど、また嫌な思いをさせちゃったね?」
エリスはフェリシアを涙で濡れた目で見上げ口を開いた。
「陛下が・・・陛下が悪い訳ではアリマセン。どうか謝らないで下さい」
フェリシアは捲れあがったエリスの寝着を下ろし、乱れた髪を手櫛で整えながら言った。
「無理矢理にでも振り解けば良かったのに、怪我をさせたりしない様に遠慮してたでしょ?馬鹿な娘ね・・・こんな暴漢相手に遠慮しなくても良かったのに・・・・・・・・・」
「ウッ、ウ~~~ン・・・・・・・」
すると唸りながらアンジェラが動き出す。
「ちきしょう~~~っ、誰だっ!・・・・・エッ!?」
フェリシアの顔を見て硬直するアンジェラ。
エリスはフェリシアの背後に子供が隠れるみたいに逃げ込んだ。
アンジェラの顔色が青くなって行く一方、フェリシアはニッコリと可愛らしい笑顔で微笑む。
「良かった・・・お姉さまが謀反など企んで無くって♪そうなったら大好きなお姉さまでも死罪にせざるを得ないもの」
「おうっ、そんな訳無いだろ?カワイイ妹に対して・・・・・・・・・・・」
「で~も~ね~・・・・・・・・」
フェリシアの顔から笑みが引いて、凄まじい怒りの篭った表情を浮かべる。
「私のエリスに随分面白い真似をするじゃないですか?お覚悟はヨロシイかしら・・・・・・・・」
「イヤ、その~これはだな!愛情表現の一つで・・・・・・」
フェリシアは引き攣った微笑を浮かべて、アンジェラに言った。
「お姉さまには子供の頃、とっても可愛がって頂きましたけど、やっぱり偶には喧嘩も致しましたよね?」
「マ・・・マア喧嘩する程、仲がイイって・・・・・」
「でも私、お姉さまには一度も喧嘩で負けて無かったわよね?」
エリスは驚いて聞き返した。
「ま・・・まさか?」
「本当ですよ」
後ろでジニーが声を掛け、持っていたガウンをエリスの肩にかける。
「陛下は、物心付く頃・・・2~3歳の頃から魔法を操ってました。初級のサンダーやフリーズ程度でしたけど、子供の喧嘩でソンナ物を使われたら誰も敵いませんよ」
それを聞きエリスも流石に驚いた。
一方その前では、フェリシアの髪が総毛立ち、大気の精霊が震えだす。
「お姉さま・・・よくもエリスを虐めたわね?エリスを虐めて良いのは、この私だけなのにっ!!」
フェリシア様の堪忍袋の緒は、当の昔に切れていた。
"チュッド~~~ン!パラパラパラ・・・・・・・・・・・"
フェリシアの寝室が爆発し、破片が辺りに舞い落ちる。
塔を見上げる侍従達は、皆が揃って心配した。
フェリシアやエリスの安否ではなく、後片付けの手間の大きさを・・・・・・・・・・・
「ア・・・アワ・・・アワワ・・・・・・」
フェリシアを中心に幾つかの光球が浮かんでいる。
紫がかった白い光球は、雷のエネルギーが凝縮したものだ。
雷の精霊"レギオス"はフェリシアが子供の頃から仲良くしている精霊なのだ。
「たっ、たっ、たっ、助けてくれ~~~っ!」
アンジェラは階段に続く扉に走った。
"ズバッ!ガッシャ~~~ン、パラパラパラ・・・・・・・・・"
光球の一つが飛んで行き、出口の扉を吹き飛ばすと紫電を放って結界を張る。
「お、俺が悪かったっ!話せば判るっ」
そう言いながらも今度は窓に走った。
バルコニーから飛び降りたら、良くても大怪我するのだが、背に腹は代えられない。
しかし光球の方が早かった。
"バッシィ~~~ン!ビリビリビリ・・・・・・・・"
またしても逃げ口を失うアンジェラ。
本格的にフェリシアのオシオキが始まって、光球が右から左からアンジェラに襲い掛かる。
器用に、そして滑稽に避けながらアンジェラは右に左に逃げ惑う。
「チョッとした悪戯の積りだったんだってば!勘弁してくれよ~~~っ」
この誠意の欠片も無い謝罪は、フェリシアの怒りを更に煽った。
光球は激しさを増し、アンジェラを追い詰める。
人間、追い詰められると何を仕出かすか判らない。
アンジェラも多分に漏れず、フェリシアとエリスの使っているベッドの下に逃げ込もうとする。
確かに皇帝であるフェリシアのベッドだけ合って豪華で大きな作りの物だったが、2メートルを超える身長のアンジェラが逃げ込むには小さ過ぎた。
と言うより床と底板の間が狭いので、上半身が入ったところで詰まってしまう。
そして文字通り「頭隠して尻なんとやら・・・」状態のアンジェラに光球の群れが襲い掛かった。
無防備な双臀に向かって・・・・・・・・・・
"バッチ~~~ン!ビリビリ・・・・・・"
「ギャ~~~ッ!勘弁してくれ~~~っ!!」
「出来る筈が無いでしょう~~~っ!」
"ズバ~~ッ!""ガツッ"
「グエッ!」
飛び上がったアンジェラは、ベッドの底板に頭をぶつけた。
更に光球は連続してアンジェラの尻に襲い掛かった。
"ズッバ~~~ンッ!ビリビリビリ・・・・・・・・・"
「グェ~~~~~ッ!」
皮のズボンが弾け飛び、剥き出しの双臀を電撃が打つ!
「ゴメンなさい!ゴメンなさい!ゴメンなさい!俺が悪かったっ!二度とやらないから許してくれ~~~っ!」
すると光球の襲撃が停止する。
恐る恐る振り返るアンジェラ。
だがフェリシアの懲罰は終わってなかった。
全ての光球がフェリシアの掌中に収束し、特大の光球に成ってたのだ!
「じょ・・・冗談だよね?」
フェリシアは三度ニッコリ微笑んだ。
「勿論冗談・・・の筈が無いでしょう!!!!!」
飛び掛る光球、凄まじい光と音が辺りに飛び散った。
"ズッガガガァ~~~ン!"
「ギャア~~~ァァァ・・・・・」
光球がアンジェラと重なると凄まじい絶叫が響き渡り、そのままアンジェラは動かなくなった。
ピクピクと痙攣するアンジェラを見て、エリスは心配そうに声をかける。
「や・・・やり過ぎでは無いでしょうか?」
だがフェリシアは振り乱した髪を整え澄まして言った。
「この程度で死んじゃうような人間らしい奴じゃ無いって!さあてと・・・この後は如何してくれよう」
フェリシアの怒りはマダマダ収まらない。
「ウッ・・・ウ~~~ン」
アンジェラはヤケに息苦しくて目を覚ました。
周りに大勢の人が居る様で、ガヤガヤと声が聞こえて来る。
それに目を開けると地面が遠く感じられた。
「な・・・なんだ?ウッワ~~~ッ!オイッ、コラッ、お前達、見てるんじゃあネェ!」
何とアンジェラはアヴァロン市街の大木に吊下げられていたのだ。
しかもフェリシアの電撃で破れた尻丸出しの侭で・・・・・・・・・・・・・
「フェリシアッ!フェリシアは居ないのか?」
すると道に止まった馬車からフェリシアが顔を覗かせる。
「こりゃ酷いぜ、勘弁してくれよ!おおっエリスも居るじゃ無いかっ!アンタからもフェリシアに・・・・・・・」
「知りませんっ!」
エリスはソッポを向いた。本気で嫌われたらしい。
フェリシアは愉快そうに笑っている。
「明朝には迎えをよこすから、頭を冷やして置きなさい。そうだ、お姉さまの手下は鞭打ち50回で許して上げる。安心なさい・・・じゃあオヤスミ、お姉さま♪」
馬車がガラガラと音を立てて去って行く。
「バッ、バカヤロ~、これで眠れるか!こらっフェリシア~~~」
だが馬車は止まらない。
しかし意外な所から救いの手が差し伸べられかける。
「おや?アンタ・・・アンジェラちゃんかい?」
「ドーラさん?良かった・・・頼むから助けてくれよ」
街で宿屋と食堂兼酒場を経営するドーラは、フェリシアの乳母だった女である。
当然アンジェラの子守りも引き受けていた。
「何か仕出かしてフェリシアちゃんを怒らせたんだね?まったく仕方の無い子だよ、どれどれ・・・ンッ?この紙はなんだい?」
アンジェラを吊るしている綱が結ばれている街路樹に、張り紙がしてあるのだ。
「チョッと待ちなさい・・・ナニッ?アンジェラ・・・アンタって子はエリスちゃんに何て酷い事をするんだい!」
エリスが恥ずかしい思いをしないように大分押えた表現であったが、其処にはアンジェラがやった事が記されていた。
翌朝まで解放しないように、書き添えて!
「いや、それは・・・・・・・・」
「全く今時あんな良い娘は他には居ないよっ!それなのにアンタって子は・・・・・・分った!明日の朝まで頭を冷やしてなさい」
「そ・・・そんなァ~~~」
仕方なく見物人を追い払う事に専念するアンジェラ、しかし状況が悪い方に変化する。尿意を催して来たのだ!見張りの兵士に声をかけるアンジェラ。
「オイッ、チョッとトイレに行かせてくれよ。幾等何でもその位イイだろ?」
だが兵士達は冷たく言った。
「ネェ、何か聞こえた?」
「別にっ!」
「何にも聞こえなかったわ」
アンジェラは大きな声を張り上げた。
「な・・・何だと~~~っ!」
だが二人の兵士・・・第零近衛騎士団の女兵士はアンジェラをジト眼で睨み返し、ハッキリと宣言した。
「私達のエリスお姉さまに、あんな酷い事をするなんて・・・」
「いくら陛下のお姉さまでも許せない!」
アンジェラの頬を冷や汗が伝い、女兵士は声を揃えこう言った。
「朝まで我慢して下さいねっ!」
「わ・・・悪かった!本気で俺が悪かった!!だ・・・だから勘弁してくれよっ、なっ?」
アンジェラは大声で叫び、そのうち半泣きの状態になった。
騒ぎを聞き付けたドーラが来て、兵士を宥めたが中々首を縦には振らない。
結局、数分後に漏らす寸前で下ろされ、トイレに駆け込んだアンジェラは膀胱炎になる一歩手前だった。
10日ほどして騎士団に復帰したエリスは、議会にあるフェリシアの執務室に呼び出された。
流石に骨折を伴う傷から復帰したばかりなので、当分事務仕事に回されるのだろう。
だが其処には将軍全員と大臣が揃い、エリスを待ち構えていた。
フェリシアの後ろでアンジェラが、フェリシアの椅子に寄り掛っている。
「陛下、御呼びでしょうか?」
フェリシアはニコヤカに、そして上機嫌でエリスに言った。
「残念な御知らせよ・・・お姉さまの就任先だけど、任せる筈だった元帥から"三階級"落として将軍とし、新たに第八騎士団を組織させます。そしてエリス、貴女にはアヴァロン軍次席総司令官に就任して貰います。総司令官である元帥には取り合えずフォレスを就任させ、その補佐をしながら貴女が学ぶ・・・なるべく早い段階で元帥に成る為にね♪」
エリスは眼を白黒させた。
「陛下,それでは話が違います!それではアンジェラ様は私より下の・・・・・・」
だがフェリシアは笑いながら言った。
「だって仕方ないじゃない。元帥就任予定者が反乱罪一歩手前の事を仕出かしたんだから♪帝国裁判所でも裁かれて記録にも残っちゃったし、そんな人を元帥に出来る訳は無いでしょう?」
「し・・・しかし」
アンジェラも楽しそうに言った。
「俺は何処でも、そして階級の上下にも拘らないぜ。エリスの側に居られるなら・・・・・・・・」
そう言ってエリスに投げキッスをした。
空かさずその足をフェリシアが踏み、足を抱えて悲鳴を上げる。
「この人事にはエリスに対する懲罰も有ります。こんな危険人物を元帥に推薦した責任の・・・だから拒否は許さないからね!」
「そんなっ、では私は何の為にコンナ苦労を・・・・・・・・」
エリスは目の前が暗くなる。
「運が・・・と言うより相手が悪かったわね?マアこうなった以上仕方ないじゃない。第零近衛騎士団長兼、アヴァロン軍次席総司令官殿ヨロシクね♪」
「マア仲良くやろうぜ♪運が悪かったと思ってさ・・・そんなに落ち込むなっ」
エリスの両肩を、それぞれフェリシアとアンジェラが叩いきながら言った。
「誰の所為で落ち込んでるのですかっ!」
空かさずエリスはアンジェラに向かいエリスは大声を張り上げる。
しかしアンジェラはニコニコ笑いながら、一向に気にしている気配は無かった。
「ハァ~~~、確かにコノ人を元帥にするのは危険過ぎました。と言うよりコンナ人だと分っていたら、元帥にしたいなんて思いません!ジェラルド皇帝からの手紙では、もう少し知的で思慮深い人柄だと思ってました。だから私とお義父様は、アンジェラ殿下を元帥にと・・・ジェラルド皇帝の話では海軍提督として軍団の指揮をしてると言う話だったのに、陛下と同じくらい名君と名高いジェラルド皇帝が、ココまで人を見る目が無いなんて思えないのですが・・・・・・・・・」
するとフェリシアは大声で笑い出した。
「そんな事だと思ったわ♪エリスに伯父様から謝罪の手紙が来ているわよ。いくら内密にって頼まれたからって隣国の皇女、しかも姪御を最前線の実戦部隊で戦わせてる何て言い辛いから、つい指揮系統に参加してるような事を言ってしまったんだって。エリスは二通目の手紙に"お姉さまを元帥に推挙したい"って書いたんでしょう?其れを見て伯父様ったら相当焦ったみたいで、お姉さまに謝罪の手紙を持たせてたのよ。実際には独立した旅団で、しかも有能な副官を就け最前線で戦ってたんだって。お姉さまはバリバリの筋肉系の武人だった訳よ!」
「そ・・・そんなァ・・・・・・・・」
思わず情け無い声が出てしまう。
「マア貴女の意向を汲んで、取敢えずは当分フォレスを元帥に就任させるんだから、これ以上逆らわないで頂戴ね!そうだ午後に少し時間を貰えないかしら?」
「エエ結構ですが、何か御用でしょうか?」
フェリシアは地図を広げながらエリスに答える。
「宮殿下の崖崩れが進みそうだから、これ以上崩れないように工事させたの貴女じゃない!大分地形が変っちゃったけど、見て置かなくってイイのかしら?」
エリスと第零近衛騎士団の主任務はフェリシアとアヴァロン帝国の首都である聖都アヴァロニアの守護である。
地形の把握は絶対に必要だった。
次席総司令官と言う仕事を兼任しても、元の仕事を疎かにする積りは無かった。
「もう終わったのですか?アソコは崖崩れの後に大穴があいてた筈なのに随分早いですね・・・分りました。是非御一緒させて下さい」
「フェリシア~~~俺も連れてって」
「駄目ッ!」
アンジェラの頼みを0.1秒で断るフェリシア。
「エリスが療養している間、お姉さまは殆ど刑務所に居たのだから学ぶ事は一杯有るでしょう?お姉さまは軍の構成や指揮系統を頭に叩き込んで貰います」
エリスは驚いてフェリシアに質問する。
「で・・・殿下を刑務所に入れたのですか?」
「殿下なんて堅っ苦しい呼び方するなよ♪アンジェラって呼び捨てで良いぜ!」
能天気に言うアンジェラの横で、フェリシアの笑顔が肯定した。
「当然じゃない?部下の方々も御一緒に、鞭打ち刑の後で"第三鉱山刑務所"懲役10日間の旅!しっかり働いて貰ったワ♪」
エリスは呆れて呟いた。
「皇女殿下を・・・しかも実の姉を・・・拠りによって鉱山の重労働刑務所にですか?10日とは言え幾等何でも酷すぎるのでは・・・・・・・・・・・・」
「そうでも無いみたいよ」
フェリシアが言うとアンジェラは面白くもなさそうに言った。
「もうチョッとノルマが多くても大丈夫だぜ?重労働なんて名前ばかりで大した事無かったじゃあ無いか。メシは不味いけど量だけは有ったし・・・・・・・・・・・」
エリスは溜息を吐きながら答える。
「成る程・・・身体だけは丈夫な様ですね」
その台詞を聞いたアンジェラは、不貞腐れたような顔をする。
フェリシアの宮殿は通称を"白峰宮"と言い、文字通り雪を被った峰のような美しい白亜の建造物であった。
無駄に贅を尽くさず、伝統的な建築様式の美しさを前面に押し出した趣のある建造で、歴史も古く宮殿と呼ばれているが実質は城に近い造りであった。
戦乱時に市民を巻き込まない様に街から少し離れて建てられている。
湖のほとりの一寸した高台に宮殿が建っていて、宮殿と湖は広大な森林に囲まれている。
更に森の中には修道院のある丘や、リーザの管理する研究所も点在していた。
エリスはフェリシアに案内されるまま、3人の侍従を連れ崖崩れの跡を視察した。
帝国内しかも宮殿周辺だし、侍従の一人はレイだったので、警護の兵は要らないと踏んだのだ。
崖には特に警備上の問題は無い様で、穴は埋められ木々が植え付けられている。
そして崖崩れが再発しないよう、余分な水を逃がす"石造りの用水路"まで建設されていた。
「成る程・・・コレだけ水気を逃がすように出来たら、崖崩れの再発は心配ないでしょう」
その出来にエリスは感心する。
用水路は崖下の池に繋がり、その先で河に合流していた。
池の中には橋で行き来が出来る小島まで造られ、美しい花が咲き乱れていた。
中でも圧巻なのは見た事も無いような珍しい、そして美しい花が咲き誇る巨大な樹木が立っている。
「コレは見事な樹木ですね。それに初めて見る花です」
青々と繁った緑の下で、葡萄のように小さな花が集まって垂れ下がっていた。
レイが故郷から持って来た"藤"の花に形が似ていた。
だが色は全く違い、根元が濃いブルーで先に行くに従い金色に輝いていた。
ゴールドとブルーのグラデーション、エリスも始めて見る花だ。
高さは30メートル近くあり、幹も大人が10人以上集まっても抱え切れない程である。
エリスが見た事も無い大木だった。
「凄いでしょう・・・でもそんな事の為に貴女を連れ出した訳じゃ無いのよ。エリス!貴女・・・お姉さまに襲われた晩、私の言い付けを破って、勝手な行動を取る気だったのね?場合によっては、お姉さまを殺そうと・・・・・・・・・」
エリスはビクッと震え上がった。
フェリシアにはローザを通じて謝罪してあったのだが、怪我をしていたので懲罰は後回しに成っていたのだ。
「幾等エリスでも裁判にも掛けずに勝手に罪人を処罰したら・・・騎士を辞めるだけでは済まないじゃないっ!」
エリスは済まなそうに頭を垂れ、フェリシアに許しを求めるのだった。
「もっ・・・申し訳御座いませんでした。騎士の資格を剥奪され、牢へ繋がれるだろう事は覚悟していました。しかし・・・それでも陛下に姉殺しをさせる訳には行かないと思い」
「その後は如何する気だったの?」
「牢から出たら勿論陛下の元に戻る積りでした。例え陛下の騎士で無くなっても、お側で御守りし続け様と・・・・・・・・・愛人としてでも奴隷でも構わないと」
フェリシアは溜息を吐くとエリスの頬を軽く叩いた。痛むほどの叩き方では無い・・・しかしエリスの心は痛みを覚える。エリスを跪かせ、その頭を抱き締める。
「もう・・・そんな事をしたらエリスが悲しむじゃない!貴女が悲しむのを見て、私が悲しまないと思ってたの?」
「分ってました・・・しかし其れでも・・・・・・・・・」
フェリシアはエリスの額にキスをした。
そして優しく言い聞かせる。
「全てを無くしても私の悲しみを軽減し様としたのネ?優しいエリス・・・でも、それでも貴女のしようとした事を許す訳には行きません。罰を与えます!」
「陛下・・・・・・・」
元より罰から逃れる積もりは無い。
エリスは黙って頷いた。
「鎧の下半身を外し、スカートを捲り下着を脱いでオシリを出しなさい!」
「ハ・・・ハイ」
侍従の前で尻を鞭打たれるのだろう。
しかしエリスは素直に従った。
腰のベルトを外し鎧の下半身を外すと、スカートを捲って下着を脱ぐ。
シルクのショーツが足を滑り落ちて行く感触が、一層羞恥心を煽った。
深い森の中とは言え見物人が居る場所でのストリップ、エリスは今にも泣き崩れそうに成っている。
レイは目線を外してくれているから、周りではフェリシアと侍従の2人も計3人が見詰めていた。
「けっこう・・・次は腰を屈めてオシリを私に突き出しなさい」
フェリシアの言う通りにするエリス。恥ずかしいが逆らえる筈も無い。
「オシリの谷間を左右に開いて、恥ずかしい場所を晒すのです」
エリスはビクッと震えると、顔を真っ赤に染め身体を硬直させた。
どうやら鞭打ちではなく、辱められる屈辱罰を与えられるようだ。
エリスにとって体罰の苦痛より、辱められる屈辱刑で羞恥心を煽られる方が辛い。
「わ・・・分りました」
エリスは立ったままで腰を屈め後ろに尻を付き出すと、自らの手で尻肉を割り肛門と性器を曝け出した。
立ったままで晒すのは、四つん這いで突き出す格好よりも恥ずかしく感じる。
しかもコノ格好をフェリシアが取らせたのは、間違いなくエリスを犯す積りなのだ!
侍従の見ている前で陵辱される、エリスは何度かされているが、こんな恐ろしい刑罰は他には無い。
更に問題はどちらを使う積りなのかと言う事である。
「あの・・・陛下、もしや私のオシリを使われる御積りなのでしょうか?」
エリスは耐え切れなくなって質問した。
「だったら如何なの?嫌だとでも言う気なのかしら」
「イエ・・・そんな事は・・・・・・・・・」
「だったら問題無いじゃない?」
フェリシアの指が背後から伸び、エリスのアヌスを突っついた。エリスの喉から"ヒッ"と短い悲鳴が上がる。
「ヒッ!ゆ・・・許して下さいっ!まだ今日はその・・・実は・・・・・・・・・」
「何なの?ハッキリ言いなさい」
分っていて聞くのだからフェリシアも人が悪い。
「きょ、今日はマダ綺麗にしてないんですっ!このままオシリでされたら、陛下の身体が私の排泄物で汚されてしまいます。如何してもと言われるなら宮殿から、風の精霊を閉じ込める術器の壺か浣腸器を持って来ますので、それまでは如何か御待ち下さい」
自分の排泄物が愛するフェリシアの身体を汚すなど、エリスには絶対に耐えられなかった。
自分が汚されるのより余程恐ろしい!
だがフェリシアはエリスの正面に周り込むと、悪戯っぽい微笑を浮かべた。
何か企んでる時の顔である。その企みに恐怖を覚え、同時に少し安堵するエリス。
微笑みはフェリシアが本当に心の底から怒ってない事を示している。
かと言って懲罰が軽くなる訳では無いのだが・・・・・・
「心配無いわ、今から綺麗にするんだから・・・エリスッ!その姿勢を絶対に崩しては駄目だからね」
フェリシアが指をパチンと鳴らす。
同時に背後から地面が揺れ始めた。
フェリシアの命令が有り尻から手を離せないエリスだったが、両手で尻の谷間を左右に開いたまま、恐る恐る振り返る。
「これは?」
エリス達が居るのは池の中に造られた人工の小島だった。
中心には先ほどの巨木が植えられ、その前でエリスは辱めを受けている。
その巨木が動いているのだ.
「珍しい花の筈・・・今までも小さな花を付けるのは知ってたけど、ココまで巨大に育たないと本当の花を咲かせる事は出来なかったのね?」
「そんな・・・コレは・・・・・・・・・」
たじろいだエリスは姿勢を崩し掛ける。
「あの洞窟の中は半分くらい埋もれてたけど、本当はズット大きかったのよ。掘り出したら高さも1.5倍も有ったわ。しかもココに移植したら三日で緑に成って花を咲かせる・・・凄い生命力ね!」
「陛下・・・御願いします。この罰は・・・このオシオキだけは許して下さい」
エリスは恐怖で涙を流していた。
しかしそれでも姿勢を崩したり、尻から手を離す事が無い。
エリスにとってフェリシアの命令は何より勝り、その命を破る事は結して無いのだ。
だからエリスには、フェリシアに必死で許しを乞う事しか出来ない。
「エリス何度も言うけど、その姿勢を絶対に崩しては成りませんからね!」
「御願いしますっ!陛下・・・このオシオキは・・・ヒッ、イ・・・イヤァァァ~~~ッ!」
涙を千切って泣き叫ぶエリス!
アンジェラに加えられた拷問が再現され様としていた。
「お願いです陛下、如何か許して下さい!このオシオキは・・・このオシオキだけはっ!」
だがフェリシアはエリスの許しなど全然聞かず、マンイーターと会話をしていた。
「流石に1万年も生きた貴方は凄いわね?いくら古代語が話せる私が相手と言え、完全な会話が出来るんだから・・・そうなの貴方達って1000年以上生きないと本当の花を咲かせられないんだ」
そうこう言う間にも触手はエリスの双臀に迫って来た。
そして鎌首をもたげて、エリスの肛穴に狙いを定めている。
「陛下っ!後生ですから」
「お黙りなさいっ!さあ久し振りの獲物、タップリ味わいなさい・・・でもアノ時みたいに乱暴しちゃ駄目よ!もっと優しくユックリと差し込むの」
"ヌメッ!グヌヌヌヌ・・・・・・・・"
「ウワァ~~~~~ッ!」
触手の先端が菊の蕾を突き破ると、盛大に悲鳴を上げてエリスは仰け反った。
粘液にコーティングされた内側の触手がエリスの腸壁を逆登る。
エリスは必死で肛門を引き締めて、ヌメリながら進入する触手を食い止めようとする。
しかし嘲笑うように括約筋を蹂躙し、腸壁をよじ登る触手の感触を余計に感じさせられるだけであった。
「お許しを・・・如何か、如何か御許しをっ!お願いです陛下・・・陛下ぁ~~~~~っ!」
エリスの泣きながら訴える声が響き渡る。
しかし触手の進入は止まる事無く、エリスの直腸を貫いて大腸まで達した。
そこで触手の進入は止まってしまう。
"な・・・何でこんな事に・・・・・・"
数人の見物人に囲まれ、自ら着衣を肌蹴る女騎士、それは傍から見れば異様な光景であった。
しかも自ら双臀を割り開き、立ったまま後ろの突き出す格好は、惨めで・・・そしてイヤらしい!
足はガクガクと恐怖に震え、顔は血の気を無くし蒼白である。
マンイーターが今にも樹液を注ぎ込みそうなのだ・・・・・・・・・・そして遂にその時が来た!
"ボコッ!ゴポゴポゴポ・・・・・・・・・・・"
触手が膨張し、樹液の浣腸が始まった。
「はうっ!ア・・・アアッ・・・・・・・・・」
エリスの大腸に温かい液体が注がれる。
やがて液体は降り、直腸から肛門の内側まで溢れ出す。
途端に凄まじい灼熱感と焼き付く様な強烈な痛み、そして耐えがたい排泄欲がエリスを襲った!
「うぐっ,うぐぅ・・・ハウッ!アッ、アァ~~~~~ッ!」
耐えられず括約筋が弛められると、マンイーターは強烈な吸引をかけて全てを啜った。
熱い樹液の浣腸がエリスの腸内を洗い流し、エリスの腸壁を掻き毟る。
「ヒック・・・ウグ・・・グスン・・・・・・・・・」
エリスは立ったままマンイーターの蹂躙を受け、泣き始めるのだった。
確かにエリスのした事は、未遂と言え重罪だった。
厳しい罰を受けるべきなのは分っている。
しかし行き成り連れ出された所で、ここまでハードな罰を与えられると思ってなかったのだ。
「フフッ、流石のエリスもコレには応えた見たいね?私の為を思ってやった事なのに、ここまで厳しい罰を受けるんじゃ割りが合わないかしら」
するとエリスは飛び上がって否定する。
「そんな事は有りませんっ!罪深き私が騎士団に残っていられるだけで感謝しています。このオシオキが厳しいなんて、これっぽっちも・・・た、ただ・・・・・・・・・」
「ただ・・・何なのかしら?」
エリスは尻を押え、振るえながら答える。
「こ・・・こんなにも恐ろしい罰が用意されてると思ってなかったのです。いいえ・・・こんなにも恐ろしい罰が、この世に存在するとなど思ってもませんでした。こんなにも辛く、苦しくて恥ずかしいなんて・・・公衆の面前で全裸に成り、鞭打たれるの何かコレに比べたら・・・・・・・・・・・・・」
フェリシアは怯えるエリスを抱き寄せ、その口唇に口を重ねながら言い聞かせる。
「じゃあエリスの罰に丁度良いわね♪そんなにも怖い罰が待ってると思ったら、今後は少しは考えて行動をする様になるんじゃあない?」
だがエリスは首を横に振った。驚くフェリシアに自ら宣言する。
「イイエ、こ・・・今回の事だけは・・・陛下の言い付けに背いた事自体は申し訳ないと思ってます。しかし殿下を斬ろうとした事は決して後悔してないんです」
「エリス・・・貴女・・・・・・・・・」
エリスは言葉を続ける。
「最初はアンジェラ殿下を逃がそうかと思いました。しかし反乱者を逃がしたら、陛下は私を死刑にしなくては成らない・・・そうなったら陛下は、それこそ殿下を斬るより悲しんで下さると思いました。だから私を殺す事無く、陛下に姉殺しをさせない、唯一の方法を選んだのです」
「その位は分ってるわよ!でも私は・・・・・・・・・」
エリスはフェリシアに抱かれながら言葉を続ける。
「私が聖騎士になった時、陛下は私にこう言われました。"全てに優先してアヴァロンの民と国を守りなさい"と、私は今までも・・・そして今後も、この約束を守り続ける積りです。でもその約束に反しない限り、私は陛下を守って悲しませない様にしたいのです」
フェリシアはエリスを抱き締めると、口に手を当て黙らせる。
そして優しく耳元で囁いた。
「エリス・・・まったく貴女って娘は・・・・・・・・・」
マンイーターの樹液の浣腸は更に激しさを増し、エリスに苦痛と屈辱を与え続ける。
しかしエリスはフェリシアに抱かれている間、不思議と辛さを感じていなかった。
「しっ・・・しかし意外と義理堅い陛下の事ですから、マンイーターとの約束を守って移植すると思ってました。ア、アンッ!で・・・でも何でこんな場所に・・・それに洞窟から出たのなら、このマンイーターも自力で動けるのでは・・・・ヒッ!お願いです陛下っ、もっと優しく・・・・・・・・・・・」
マンイーターの根元、その太い根に腰掛けたフェリシアの膝の上でアヌスを犯されながらエリスは質問する。
「意外にって・・・またエリスは虐められたいのかしら?」
途端にフェリシアの腰使いが激しくなった。
散々マンイーターの樹液で、焼き付くような痛みに耐え続けた肛門が悲鳴を上げる。
「ヒグッ、許して・・・許してェ~~~っ!お願いです陛下、乱暴にしないで下さい。オシリが辛くって・・・・・・・・・・」
「どんな風に辛いのかしら?」
「マンイーターの樹液は凄い染みるんです。このマンイーターのは特に・・・ですから今でもエリスのオシリは・・・・・・まるで火が付いたように、そのオシリを乱暴にされたら・・・・・・・・・・」
「感じちゃうの?」
エリスは背後で陵辱を続ける主を振り返り、必死で頼み込む。
「本当に・・・本当に辛いのです。熱くって染みて痛くて・・・エリスが悪いのは分ってます。罰を受けるのは当然です。でも・・・でも少しだけ温情を、もう少し優しくして下さい。お願いします」
「駄目、壊れる位に激しくして上げる!」
ギクッと硬直するエリスを、フェリシアは笑う。
「冗談よ。それに貴女を責める道具にする為に、宮殿近くに置いたんじゃ無いから安心なさい。でも私を怒らせたら何時でもココに連行して、あの子にオシオキを手伝って貰いますからね!」
フェリシアも本来の調子を取り戻し、笑いながらエリスに言った。
「あの子は自分ではアンマリ動けないのよ。自分の重さが足枷になってるのよね。まあ彼の根っこは数100メートルもあって、一部を宮殿の下水管に導いてあるの。飢える心配は無いでしょう」
「で・・・ではアノ場所に移植した理由とは?はうぅ・・・・・・・・・・・」
首を傾げるエリスに向かって、悪戯っぽく微笑むフェリシア。
「崖の黒スミレよ、エリスも何度か貰った事があるでしょ?黒いスミレの花を"押し花"にして意中の相手に贈るのが、聖都で流行ってるじゃない」
「そ・・・そうすると恋が適うと迷信の有るアレですね?アンッ、きゅ、宮殿の下の崖に群生してるので・・・ヒッ、いくら危ないからと言っても・・・ま、街の娘達がコッソリ摘みに来るのですが・・・ハウッ!アッアア・・・・・・まさか?」
「そのまさかよ!」
それこそ楽しくて仕方の無いと言う顔をして、フェリシアが大笑いを始める。
「あの子に見張り番を頼んだの、ただし怪我だけはさせない様にってね。マンイーターに樹液でオシオキされるって分ったら、暫くしたら命がけでスミレの花を摘みに来る御馬鹿サンは居なくなるでしょう」
呆れ返る一同、唯一エリスが溜息交じりに呟いただけである。
「陛下・・・やっぱり、あ・・・貴方は悪魔です・・・・・・・・・」
エリスは乱れながらフェリシアに言い、レイは思わず吹き出した。
つづく