催魔、それは遥か昔、魔術師・魔道士達の手によって編み出された秘術。
その力は、使い手が相手に対して強力な催眠・暗示等をかける事、使い手の思念や思い、魔力等を増幅したりする事が出来る秘術である。
本来、催眠や暗示等は、相手のイヤだと言う事はどんなに強く命じても使途がう事は無いが、この力を持ってかけられた催眠等はどんな不事理な事や恥ずかしい事でさえも行わせる事が出来る、強力な術である。
そして、その秘術の力をいくつかのをアイテムに込めた物を、催魔の器(さいまのうつわ)と呼ばれ、誰でもこの術を使う事が出来る様になるだった・・・そう、たった一つの条件を満たせば・・・その条件とは”欲望”っである・・・
そして、多くのアイテムは長くの間、人々の手を渡り歩き様々な力を人に与え続けた。
今また、一人の少年の手に渡る所から、新たな歴史が動き始める・・・
カラ~ンッ・・・店のドアを開ける音と共に一人の少年が店の中に入ってくる。
少年の名は田島 博之(たじま ひろゆき)、この春、私立 慧蘭高校(けいらんこうこう)に入学したばかりの新入生だった。
彼は、常にボサボサの髪に、分厚いメガネ、低そうな身長・・・155cm、そして何よりもひ弱そうな身体つき殻も分かるように、オタクである。
そう彼は、オタクはオタクでも、魔術オタクであった。
今、彼はある出来事のお陰で不登校中である。
そんな彼がちょくちょく来ているのがこの店、マジックアイテムショップ『マクア』である。
「おっ 兄ちゃん今日も来たね」
少し頬のこけた、初老の老人が少し低い声でだが愛想のいい声で声をかける。
「あぁ じっちゃん、急は何かいいのはあるかい?」
少年は、いかにも常連っとイった感じで店主と会話を始めていた。
「そうそう そう言えば、いいのが入ってきたんだよ」
暫く話をしていると、店主が急に話を切り、そそくさと店の奥に入っていってしまった・・・二~三分くらいして奥から戻ってきた店主の手の中には、古ぼけた調度のいい箱を持ってくると、少年の目の前で箱の蓋を開け、中を見せた・・・
「うわ~ なんだいこれは??? 綺麗だねぇ~」
少年は驚いた、なぜならば中に入っていたのは薄暗い店の中でもキラキラと光って見えそうな位、怪しげに輝いている赤い水晶が入っていたのだった・・・
「ふふふっ これはな、あの伝説の『催魔の輝石』じゃよ・・・」
店主はニヤニヤとした顔で少年に告げると・・・
「えぇっ!!! こ、これが、あの伝説の・・・」
少年は目を丸くしながら店主と水晶を交互に見回した・・・
「はっはっはっ いや~冗談、冗談だよ・・・これはただの模造品だよ。そんなのがうちに入ってくるわけ無いだろ。ただ、ものは一級品だけどね。」
店主は、さも面白かったと言わんばかりに笑いながら少年に話し掛ける。
「な、何だよ、おどかすなよ~ ちぇ~本物じゃないんだ・・・」
少年は、騙されたので複雑な気分になりながらも、心底残念そうに口を開いた・・・
「まぁまぁ、 まっ 確かに驚くのも無理は無いわなぁ~どうだ、いつも色々と買ってもらっているし、本当なら10万はするこの品、兄ちゃんには特別に1万で売ってやってもいいぞ・・・」
店主は、初めと同じくニヤニヤした顔つきに戻り、それでいて真剣な口調で少年に話し掛ける。
「えっ 10万を1万に・・・ほ、ほんとに???」
少年はまた目を丸くして、店主に聞き返した。
「あぁ、今度は本当だ・・・ただし、これは本物ではなく、あくまで模造品、つまり偽者だからな・・・ただ、それでも一級品に引けを取らないほど品としてはいいぞ」
店主は、真剣そのものの口調で話をしていた。
「うぅ、 ど、どうしようか・・・でも、いいなぁ・・・んぅ~か、買う、買うよ・・・っ!」
散々考えあぐねてはいたが、、考えの末、その偽の『催魔の輝石』を買うことを決意し、持っていたなけなしの1万で買ってしまのだった・・・。
カラ~ンッ
「まいどあり~」
最初と同じく、店のドアが鳴り響く中、奥から店主の声が聞こえ、少年は家路へと急いだ・・・
「これがに偽者かぁ~」
家に帰りさっそく箱から輝石を取り出すと、マジマジと見つめていた・・・
「これが本物だったら今ごろは・・・」
少年は、奇跡を持ったまま、一週間前の事を思い返していた・・・
一週間前の学校の教室の放課後・・・
「ごめんなさいっ 私、今は誰とも付き合う気は無いの、だから貴方とも付き合えないの、ごめんなさいね・・・」
少女はそう言うと味早にその場を去って言った・・・一人その場所で取り残された少年は、悔しい思いをしながら少女が去っていった方を睨みながら無言で立ち尽くしていた・・・
ハァ~
少年は大きくため息をつきながら輝石を見つめていた・・・
畜生っ!
心の中で強く叫んだ瞬間・・・
キラ~ンッ!
一瞬だが輝石が今までよりも強く光った・・・
「えっ!」
あまりに一瞬の出来事で何が起きたのか分からなかったが、少年は半信半疑で輝石を持ちながら強く念じ始めた・・・そう、自分の欲求と欲望を念じながら・・・
チカッ チカッ チカッ キラ~ンッ!
こんどは、一瞬ではなく、チカチカと光り始めたかと思うと、強く光を放ちながら輝きつづけるのだった・・・
「ほ、本物だ・・・」
光り輝く輝石を見つめながら呆然としていた少年の顔つきが徐々に怪しく顔を歪め、怪しいまでも笑みをこぼし始めていた・・・
続く